便秘薬の種類と使い分け – あなたにおすすめの便秘薬は?
執筆・監修:薬剤師 笹尾
便秘薬には、市販薬と医療用の処方薬があり、それぞれにいろいろな種類があります。種類ごとの違いを理解して、効果やデメリットによって使い分けることが大切です。
この記事では、効果別におすすめの市販薬と医療用の便秘薬を紹介し、それぞれの便秘薬の特徴と副作用などについてお話していきます。
便秘薬ってどんな薬?
便秘薬は辛い便秘の症状を改善してくれるので頼りになります。ただし、便秘の状態に応じて適切なタイプを選び、正しく使用することが大切です。まずは便秘薬について基本的なことを知っておきましょう。
便秘の症状を改善する効果がある
便秘薬と言っても種類はさまざまで、効果の現れ方には違いがあります。どの便秘薬についても共通しているのは、排便を促して便秘を改善する作用があるということです。
作用や成分の違いから、便秘薬はいくつかの種類に分類することができます。
便秘薬には市販薬と処方薬がある
いろいろな分類の仕方がありますが、大きく分けると市販薬と病院で処方してもらえる医療用の便秘薬があります。
便秘になった時に、自分で対処しようと考える方が多いと思いますが、この時に頼りになるのが市販薬です。いろいろな種類の中から自分が求める効果のお薬を選べるというメリットがあります。
一方で、市販薬を試してもなかなか便秘がよくならないという場合や、なんらかの病気で便秘になっているという場合には、病院から便秘薬を処方してもらった方が安心でしょう。
状況に応じて市販薬で対処するか、病院でお薬をもらうか使い分けることが大切です。
おすすめの市販の便秘薬の種類と特徴
まずは、自分で対処したいという時には、市販薬が便利です。でも、便秘薬を薬局やドラッグストアで購入する時に、市販薬の便秘薬には種類がありすぎてどれが良いか迷ってしまいますよね?
そこで、求める効果ごとに、市販の便秘薬の種類と特徴を紹介します。便秘薬選びの参考にしてください。
即効性を期待したい場合におすすめの便秘薬
とにかく早く便秘を何とかしたい、という場合には、即効性が高いタイプを選ぶと良いでしょう。ただし、お腹が痛くなりやすく、日中にトイレに駆け込んでしまう可能性もあるので、使うタイミングに気をつけましょう。
大腸刺激系便秘薬
大腸刺激系の便秘薬は、大腸を刺激して、腸の動き(ぜん動運動)を促して排便を起こさせる作用があります。さらに、大腸刺激系には、「アントラキノン系」と「ピコスルファートナトリウム」などの成分があります。
アントラキノン系
「アントラキノン系」としては、センナやセンノシドという成分が市販薬によく入っています。センナとはマメ科の植物で、葉や実は医薬品の原料として、茎は健康食品、お茶などに使用されています。
また、アントラキノン系ではありませんが、「ビサコジル」という大腸刺激系の成分も良く使われている成分です。
例えば、「スルーラックS」(エスエス製薬)、「コーラック」、「コーラックハーブ」(大正製薬)があります。
即効性は高いですが、お腹が痛くなりやすく、薬に頼りがちになってしまう場合もあるので注意が必要です。
画像:スルーラックS エスエス製薬
画像:コーラック 大正製薬
ピコスルファートナトリウム
「ピコスルファートナトリウム」は「ビオフェルミン便秘薬」(ビオフェルミン製薬)に含まれています。ピコスルファートナトリウムの方が、センナなどのアントラキノン系と比べると作用が穏やかで、お腹が痛くなりにくいのが特徴です。また、長期に使う場合にもアントラキノン系より安全性が高いといわれています。
ただし、妊娠中に使用すると、早産などを引き起こすこともあるので注意してください。
画像:ビオフェルミン便秘薬 ビオフェルミン製薬
浸潤(しんじゅん)性下剤(DSS)
DSS(ジオクチルソジウムスルホサクシネート)という成分は、油と水をくっつける界面活性作用があり、便に水を与えて柔らかくする作用があります。
「コーラックⅡ」、「コーラックファースト」(大正製薬)、「スルーラックプラス」(エスエス製薬)などにビサコジルなどの大腸刺激系成分と共に含まれています。
画像:コーラックⅡ 大正製薬
画像:スルーラックプラス エスエス製薬
「オイルデル」(小林製薬)は、生薬成分の「麻子仁(ましにん)」とDSSを配合した珍しいタイプで、便を出しやすくする作用が期待できます。
画像:オイルデル 小林製薬
お腹が痛くなりにくい便秘薬
大腸刺激系の便秘薬は、効果は速いことが特長ですが、お腹が痛くなりやすく、下痢っぽくなる場合もあるので苦手という方もいるのではないでしょうか。
お腹が痛くなるのが嫌な場合には、お腹が痛くなりにくい便秘薬がおすすめです。
ファイバー系便秘薬
植物せんいなどを主成分として、腸内で水分を吸収し、便のかさを増やすことで排便しやすくする便秘薬です。
お腹が痛くなりにくく、食事量が少ない人や自然なお通じを取り戻したい人におすすめです。
例えば、「コーラックファイバー」(大正製薬)、「スルーラックデトファイバー」(エスエス製薬)などがあります。コップ1杯、200ml程度の水と共に飲むようにすると効果的です。
画像:コーラックファイバー 大正製薬
画像:スルーラックデトファイバー エスエス製薬
塩類系(酸化マグネシウム)
便に水分を与えて柔らかくしてくれるのが「塩類系下剤」です。カチカチの便になると出しにくいだけでなく、切れ痔の原因にもなるので便を柔らかくする薬を使うと良いでしょう。
代表的な成分としては「酸化マグネシウム」があります。お腹が痛くなりにくく、クセにもなりにくいので比較的に安全なタイプです。
ただし、腎臓に異常がある人や高齢者などは、医師に服用して良いか確認してから使用することをおすすめします。
例えば、「ミルマグLX」(エムジーファーマ)、「スルーラックデルジェンヌ」(エスエス製薬)、「スラーリア」(ロート製薬)などがあります。
画像:ミルマグLX(エムジーファーマ) 森下仁丹オンラインショップ
スルーラックデルジェンヌ
画像:スラーリア ロート製薬
漢方系便秘薬
便秘薬の中には、漢方処方で作られたタイプや生薬成分が含まれるお薬もあります。漢方の場合は、体質によって使い分けるのが効果的です。
また、漢方というと何となく安全なイメージがあるかもしれませんが、例えばセンナやダイオウ、アロエなどの成分を含む場合には作用が比較的強く、お腹が痛くなることもあるので要注意です。
例えば、「タケダ漢方便秘薬」(武田薬品工業)、「コーラックハーブ」(大正製薬)などがあります。
画像:タケダ漢方便秘薬 武田薬品工業
画像:コーラックハーブ 大正製薬
浣腸および坐薬
飲み薬では効果が出ないという場合に頼りになるのが、浣腸や坐薬です。即効性が高く、早ければ挿入して10分程度で効果が現れることもあります。
ただし、効果が高い分、頻繁に使うと効果が出なくなる可能性もあるので、本当に出ない時の最終手段として考えるべきです。
例えば、「イチジク浣腸」(イチジク製薬)、「コーラック坐薬」(大正製薬)などがあります。
画像:イチジク浣腸 イチジク製薬株式会社
画像:コーラック座薬 大正製薬
医療用の便秘薬の種類と特徴
便秘の状態が長く続いていたり、症状がひどくて市販薬では対処できないという場合には、病院から処方されたお薬を使った方が良いと考えられます。
また、原因を知るために診察を受けることも大切です。
医療用の処方薬の場合には、どのようなお薬があるのか種類と特徴についてお話していきます。
大腸を刺激して排便を促す便秘薬
大腸を刺激して出しやすくする効果のあるお薬として、プルゼニド(センノシド)、ラキソベロン(ピコスルファートナトリウム)、アローゼン(センナ・センナ実)などがあります。錠剤タイプ、液体タイプ、粉薬など形態も様々なので飲みやすさからも選ぶことができます。
ただし、長期使用によって効果が出にくくなったり、依存や習慣性といった問題が出てくることもあるので注意が必要です。
便を柔らかくするための便秘薬
市販薬でも手に入る成分と同じで、「酸化マグネシウム」が主成分のお薬があります。これは、医療用でもよく使われています。
製品名としては、「酸化マグネシウム」、「マグミット」「マグラックス」などの種類があり、粉薬や錠剤タイプもあります。
便秘薬の中でも緩下剤(かんげざい)と呼ばれ、効果が比較的穏やかで安全だといわれています。
ただし、腎機能障害や心臓疾患などがある場合には注意して使用しなければいけないお薬です。
腸の水分調整をして排便を促す便秘薬
比較的まだ新しいお薬で「アミティーザ(ルビプロストン)」という便秘薬があります。慢性便秘症の場合にのみ使うことのできるお薬です。
小腸から水分を便の方に引き寄せることで、便を柔らかくして出しやすくする作用があります。便が硬くなって出しにくいような方に使うと効果的です。
ただし、まだ歴史が短いお薬なので、いろいろな副作用に気をつけながら服用することが大切です。
医療用の漢方薬
便秘に対する効果のある漢方薬はとてもたくさんの種類があります。市販薬でも一部は手に入りますが、医療用では選択肢がもっと広くなります。お医者さんの判断で自分にあった漢方薬を選んでもらうこともできます。漢方で便秘を改善したいならば、漢方に詳しいお医者さんや漢方薬局などに相談してみると良いでしょう。
浣腸および坐薬
今すぐに便を出したいというとき、非常に頑固な便秘のとき、お薬を飲むことが難しい場合には浣腸または坐薬が処方されることもあります。
例えばお薬がまだ飲めないような赤ちゃんには「新レシカルボン坐剤」というお薬がよく使われます。また、高齢者や重度の便秘の場合には浣腸を使う場合もあります。
参考資料:新レシカルボン坐剤くすりのしおり
便秘薬の副作用
便秘薬は使うとスッキリするので、ついつい頼りがちになります。そして、効かなくなってくると、使う回数、使用量が増えてきてしまうことが問題です。
便秘薬は正しく使用しないと、思わぬ副作用が出ることもあるので要注意です。
長期使っていると効かなくなる場合がある
便秘薬を頻繁に使ってしまうと、だんだんと効きにくくなってしまうことがあります。特に、センナやダイオウのような大腸刺激系の便秘薬は要注意です。
大腸が刺激になれて動きが悪くなり、効果が出なくなってしまうのです。その結果、どんどん便秘薬の量が増え、最終的には便秘薬を使っても便が出なくなってしまうことも考えられます。
また、自然な便意が起こらなくなってしまう危険性もあります。
大腸メラノーシスの危険性
特にセンナやダイオウなどのアントラキノン系便秘薬では、大腸メラノーシスが問題になります。大腸メラノーシスというのは、簡単に言うと大腸の腸壁が黒くなる症状で、大腸黒皮症とも呼ばれます。
大腸メラノーシスになると、大腸の動きが悪くなって便秘になりやすくなったり、便秘薬が効きにくくなる原因になるといわれています。
次の記事では、便秘薬の副作用について詳しく解説しています。長く便秘薬を飲んでいる方や、副作用が心配な方。これから便秘薬を使用するという方は、ぜひ読んでみてください。
参考:「おなかの張り」をとれば腸は年をとらない!」松生恒夫 著
便秘薬はどう使えば安全に使えるの?
便秘薬は使い方を守ることが安全に使用するために大切です。次の注意点をあらかじめ確認しておきましょう。
大腸刺激系便秘薬はなるべく使わない
即効性が高く、ついつい頼りたくなる大腸刺激系の便秘薬であるアントラキノン系便秘薬(センナなど)。こうした薬は、大腸メラノーシスを起こし、薬が効きにくくなる場合があるので、使い過ぎないように注意しましょう。
大腸刺激系の便秘薬に依存してしまうことの無いように、まずは他の方法を試してみてください。それでも効果が出ない場合に、あくまで最終手段としてこうした薬に頼るようにしましょう。
おすすめは比較的安全なタイプの便秘薬や整腸剤
便秘薬の中でも、比較的安全だといわれるのが、塩類系下剤の酸化マグネシウムです。また、整腸剤を使う方法もあります。整腸剤というのは、生きた菌などを主成分として腸内環境を整え、便秘やお腹の張りを改善する作用のある薬です。
整腸剤は長期的に服用することが出来て、腸内環境を根本的に整えることができるので、慢性的な便秘に悩む人におすすめです。
整腸剤の種類や使い方については、別途記事で詳しく説明しています。こちらの記事も参考にしてみてください。
もし、塩類系や整腸剤では効果が不十分だという方は、大腸刺激系の中でもピコスルファートナトリウムを使った方が長期使用する場合には比較的安全だといわれています。
参考文献:「「おなかの張り」をとれば腸は年をとらない!」松生恒夫 著
センナを含む漢方薬や健康茶も要注意
漢方だからと安心してセンナを含む便秘薬だけでなく、センナ茶のような漢方茶に頼ることもおすすめできません。大腸を刺激する作用があるお茶も食品だからといって安心はできないのです。
便秘薬の副作用や、安全な使い方については、以下の記事の中に詳しくまとめています。もっと詳しく知りたいという方は、参考にされてみてください。
便秘薬を使用しても改善しない場合には病院へ
便秘薬を使っても症状が良くならないこともあるでしょう。便秘薬の量を増やしたり、いろいろな便秘薬を使っても改善しない、便秘が1ヶ月以上に渡って長引くという場合には、何らかの病気が隠れているということも考えられます。
突然、原因も分からずに便秘になった時も要注意です。例えば、大腸ガン、過敏性腸症候群、 憩室炎などの病気が挙げられます。まずは早めに専門医を受診することをおすすめします。
監修・執筆:薬剤師 笹尾
参考文献:「よくわかる便秘と腸の基本としくみ」坂井正宙 著