便秘薬にはどんな副作用がある?長期間飲んでも大丈夫?


執筆・監修:薬剤師 笹尾

「便秘薬を飲みたいけど副作用が心配、、」
「ずっと飲み続けて大丈夫?」

こんな不安を抱えている人はいませんか?

便秘薬は、飲み方や使う量に気をつけて、注意を守って正しく服用しなければ、思わぬ副作用が起きる場合があります。効果があるのは良いけれど、副作用があるのは困りますよね。

安全に服用するために、便秘薬の副作用について知っておきましょう。

処方薬

便秘薬は安全?危険?

便秘薬は、市販薬としても販売されているから安全なもので、副作用なんて無いだろうと思っている人はいないでしょうか。

もしくは、便秘薬は怖い薬なのでは?と、過度に不安に感じている場合もあるでしょう。便秘薬は果たして安全な薬なのでしょうか?

便秘薬とは?

便秘薬とは、便秘の改善のために使われる薬のことです。「下剤」、「瀉下(しゃげ)剤」などの呼び方をすることもあります。また、種類がいくつかあり、便秘薬といっても1種類だけではありません。

便秘薬は、症状や原因によって使い分けると効果的です。しかし、一方で副作用の現れ方にも違いがあるので、特徴を知っておくことが大切です。

便秘薬にも副作用はある!

注意を促す女性

便秘薬は便を出すだけだから安全そうという印象があるかもしれませんが、残念ながら便秘薬にも副作用はあります。副作用としては、飲んだ直後に現れる一時的なものから、長期的に服用していると、後から徐々に現れるものがあります。

その症状は病気が原因?便秘薬の副作用?

便秘薬に副作用があるからといって、何か異変を感じて、すぐに「副作用かも?!」と思い込むのは良くありません。

もしかしたら、便秘薬を飲んだ事による影響では無く、何らかの病気が原因になっている可能性もあるからです。

例えば、吐き気が出てきたという場合には胃腸炎などの病気も考えられます。
また、便秘薬を飲んでいるにも関わらず、ますます便秘の症状が悪化してくるという時には、腸閉塞や大腸ガンなどのように、腸に何らかの器質的(形態的)な異常がある場合も考えられます。

便秘薬による副作用なのか、病気が原因なのかを見極めることは、その後の治療を判断する上でも非常に大切なポイントです。
どちらか分からない、判断が出来ない場合には医師に相談することをおすすめします。

医者に相談する女性

便秘薬の種類と副作用

便秘薬の副作用はいくつかあり、薬の種類によって現れやすい副作用が異なります。どんな副作用があるのか、種類別にみていきましょう。

大腸刺激系便秘薬

便秘薬の代表的な存在とも言えるのが、大腸刺激系の便秘薬です。よく一般的に「便秘薬」と呼ばれる薬の多くは、このタイプに当てはまります。

正常な大腸は常に動いていて、食べ物の消化物を排泄するために肛門の方向へ送り出し、最終的には直腸が反応して便意が起きるような仕組みになっています。この腸の動きを「ぜん動運動」と言います。

便秘の中でも、特に弛緩(しかん)性便秘の場合には、腸の動きが鈍くなり、便秘になります。大腸を刺激して、腸のぜん動運動を促す作用により排便を促すのが、大腸刺激系便秘薬の作用です。

【特徴】
大腸を直接刺激するので即効性が高い

【副作用などの注意点】
・腹痛、下痢、激しい吐き気、嘔吐(おうと)、長期使用による耐性の出現※
・腸に何らかの疾患がある場合、妊娠中、痙攣(けいれん)性便秘の場合などの場合は使用しない
※耐性:同じ量だけ使っても、薬が効きにくくなる現象のこと

【代表的な成分】
アントラキノン系(センナ、センノシド、ダイオウなど)
ピコスルファートナトリウム
ビサコジル

参考:プルゼニド錠添付文書

酸化マグネシウム製剤

便秘薬の中でも比較的優しい作用であるのが、酸化マグネシウムを主成分とするタイプです。酸化マグネシウムは水分を便に与えることで、便を柔らかくして出しやすくする作用があります。

【特徴】
お腹が痛くなりにくく、子供からお年寄り、妊婦さんも使うことができる

【副作用などの注意点】
軟便、下痢、高マグネシウム血症(だるさ、吐き気、血圧低下など)
特に腎障害がある場合には、服用に注意が必要

参考資料:酸化マグネシウム錠「ケンエー」添付文書

湿潤性下剤

ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DDS)は界面活性作用により、便に水分を引き込み柔らかくして出しやすくする作用があります。

【特徴】
大腸刺激系便秘薬と比べると効果は穏やかになり、市販薬にもよく用いられている成分

【副作用などの注意点】
・口の渇き、腹部膨満感、腹痛、お腹が鳴る など
・腸閉塞、重症の硬結便(硬い便)、授乳中の女性は使用しない

漢方系便秘薬

漢方薬の中には、便秘に対する効果が高いタイプがあり、便秘薬として使われる場合もあります。漢方というと効果が穏やかで安全なイメージがあるかもしれませんが、漢方であっても薬に変わりはなく、副作用があるので注意しなければいけません。

【特徴】
いくつかの生薬を組み合わせた漢方の場合には、センナのような生薬単体と比べると効果が比較的穏やかになると言われています。漢方は体質に合わせて選ぶことが効果を得るために大切です。

例えば、大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)や麻子仁丸(マシニンガン)などが使われます。

一方、センナやアロエ、ダイオウなどの生薬単体が主成分の場合には、大腸刺激作用が強く現れやすくなるので注意が必要です。これらはお茶など健康食品に含まれていることもあります。

【副作用などの注意点】

  • 腹痛、下痢、軟便 など
  • センナ、アロエおよびダイオウなどは耐性にも注意が必要

参考:愛知県薬剤師会

長期服用で便秘薬が効きにくくなる?!

疑問を感じる女性

ヨーグルトを食べたり、水を飲んだり色々と努力しても便が出ないと、つい手を伸ばしたくなる便秘薬。しかし、ずっと飲み続けていると便秘薬に頼りすぎて、便秘薬が手放せなくなってしまう人も多いようです。

そして、段々と効果が出にくくなって、量がどんどん増えていってしまうケースも少なくありません。。どの便秘薬を飲んでも、効果が出なくなってしまったら大変ですよね。

このような状態になったときに、大腸では何が起きているか知っていますか?

便秘薬が効きにくくなるのは何故?!

便秘薬の中でも、飲み続けることで徐々に効果が弱まってしまうタイプのものがあります。同じ量を飲んでも、便が出なくなってしまう事があるのです。
これを「耐性」といい、大腸を刺激するタイプの便秘薬の場合に起こります。

一般的に、腸が刺激に慣れてしまうためと考えられてきましたが、最近では「大腸メラノーシス(大腸黒皮症)」が関係していることが分かってきました。

腸が真っ黒になる?!大腸メラノーシスとは

大腸メラノーシスという名前は聞いた事が無いという人が多いと思います。「メラノーシス」というのは、黒い色素が皮膚に沈着してくることを言います。
大腸メラノーシスは、大腸黒皮症とも呼ばれるように、腸の内側が黒くなっている状態を指します。

しかも、ただ黒くなるだけではなく、さらに便秘を悪化させて慢性便秘を招く原因となると考えられています。
この症状が起きているかどうかは、大腸検査で調べることができます。慢性的に便秘を繰り返している人は、原因を調べるためにも大腸を調べてみても良いでしょう。

注意すべき便秘薬や食品

注意を促す女性

医薬品の便秘薬の、約70%以上がアントラキノン系便秘薬であるというデータもあります。それほど、センナやダイオウを主成分とする便秘薬は良く使われています。
しかし、先ほども説明したように、大腸刺激系である「アントラキノン誘導体」のお薬の場合、大腸メラノーシスに注意が必要です。

次の成分が含まれる場合は、徐々に効果が出にくくなってしまう(耐性が作られる)可能性があるので、使いすぎには十分に注意しましょう。

アントラキノン系・・

  • センナ(センノシド)
  • ダイオウ
  • アロエ

など

実は、これらは薬に限らず、健康茶やサプリメントなどの食品にも使われていることがあります。
センナ茶や、キダチアロエのエキスなど、食品だからといって安全とは限らず、同じように注意しなければいけません。

副作用が起きたらどうする?

お腹が張っている女性

副作用の程度や内容にもよりますが、使用は控えて様子を見るようにしましょう。量を調整できるタイプならば、飲む量を減らしてみても良いでしょう。

もし、強い腹痛や出血などが起こる。気になる症状が出たという場合には、早めに医師に相談するようにしてください。

ただし、便秘薬を急激に中止することで、便秘が悪化してしまう可能性もあります。急に中止する時は十分に気をつけなければいけません。
いずれにせよ、医師に相談するなど適切に判断することをおすすめします。

参考:「おなかの張り」をとれば腸を年をとらない! (松生恒夫 著)

整腸剤とサプリメントで代用は可能?

サプリメント

便秘薬だけに頼らず、腸内環境を整えてくれる整腸剤やサプリメントを活用するという方法もあります。でも、気になるのは肝心の「効果」ではないでしょうか。

果たして、整腸剤やサプリメントで代用は可能なのでしょうか?

腸内環境を改善すれば便秘は治る

便秘の原因は、食生活の乱れ、ストレス、運動不足など様々あります。しかし、どんな便秘でも、腸内環境の乱れを改善することで何らかの良い影響があるものと考えられます。

腸内細菌の善玉菌悪玉菌のバランスが乱れて、悪玉菌が優位な状態になると、腸内に過剰なガスを発生させたり、便秘を引き起こします。

腸内環境の理想的なバランスは2:1:7

便秘になると、腸内で悪玉菌がますます増えやすい環境になるので、悪循環に陥ってしまいがちです。

そのため、腸内環境を整えるために、善玉菌を増やすことが必要になります。日々の食生活の中で、食物繊維や発酵食品を取り入れ、善玉菌を増やすことが理想的です。
しかし、普段の食事の中でこれらを意識して実践することも、継続して続けることも、大変と感じる人も少なくありません。

そこで、腸内環境の改善に役立つのが、整腸剤や乳酸菌サプリメントです。

整腸剤で便秘を根本的に改善

整腸剤というのは、医薬品、または医薬部外品であり、主に乳酸菌やビフィズス菌を主成分とする薬です。便秘や下痢を改善したり、腹部膨満感の改善などにも効果が期待できます。

肝心な効果についてですが、便秘薬と比べると穏やかであり、即効性が弱くなります。しかし、長期的に飲んでも悪影響が起こりにくいのが特徴です。また、便秘だけではなく下痢や軟便の治療にも使われます。

便秘薬に長年頼っていたような人が、急に便秘薬を止めて整腸剤やサプリメントに変えても、効果がすぐには感じられないかもしれません。

便秘薬の量を減らしつつ、整腸剤と併用して切り替えていくなどの工夫をしてみるのも良いでしょう。

整腸剤についての詳しい情報や、症状別の選び方など、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。

サプリメントで効果は得られる?

やる気に溢れる女性

乳酸菌やビフィズス菌を主成分とする「サプリメント」を活用するという方法もあります。

整腸剤と似ているようですが、サプリメントは薬ではなく食品です。食品なので、医薬品よりも効果の面では穏やかになります。

サプリメントには整腸剤とは違うタイプの乳酸菌を摂れるというメリットがあります。中には便秘に対する効果が認められているタイプもあり、幅広い選択肢から選ぶことができます。

乳酸菌サプリメントの、便秘に対する効果については、以下の記事で詳しく解説しています。興味を持たれた方はぜひ参考にしてください。

腸の動きを高める便秘対策

便秘

便秘を改善するには、腸の運動を良くして便を出しやすくすることが必要です。腸の動きを良くする作用があるのは、便秘薬だけではありません。

次に紹介する食品は、腸の動きを活発にする作用があるので、ぜひ取り入れてみると良いでしょう。

オリーブオイル

優れた排便促進効果があるのがオリーブオイルです。オリーブオイルの中でも、エキストラバージンオリーブオイルを選ぶようにしましょう。含まれるオレイン酸に大腸を刺激する作用があり、排便を促してくれます。

毎朝、パンを食べる時に大さじ1から2杯程度を付けて食べる、味噌汁に入れて飲むなど毎日の食生活で取り入れてみましょう。

オリゴ糖

オリゴ糖は、糖分の一番小さな単位である単糖が2個から20個くっついて出来ている糖類です。人間の消化酵素では分解できず、善玉菌の主にビフィズス菌のエサとなります。結果として、腸内の善玉菌が増えて、腸内環境が良くなります。

オリゴ糖にも種類があり、特にフラクトオリゴ糖はビフィズス菌のエサになりやすいのでおすすめです。
スーパーの砂糖やはちみつのコーナーにあるシロップタイプならば飲み物などに手軽に取り入れられます。また、ねぎ、玉ねぎ、きゃべつ、ごぼう、果物などにも多く含まれています。サプリメントを活用するのも手軽でおすすめです。

水溶性食物繊維

便秘解消には食物繊維は欠かせない存在として知られています。
ただし、注意して欲しいのは、食物繊維の種類によるということです。
硬い便が腸に詰まってしまっている状態で水に溶けにくい不溶性食物繊維を摂りすぎると逆効果になる場合もあるので要注意。例えば根菜類、玄米などを食べてもお腹が張って便秘が解消しないならば、不溶性食物繊維が強すぎるかもしれません。

そこで、頑固な便秘を改善するには、水に溶けやすい水溶性食物繊維がおすすめです。水溶性食物繊維は、善玉菌のエサとなって腸内環境の改善をサポートしてくれます。また、余計な老廃物を絡め取って出しやすくする作用もあります。

水溶性食物繊維はキウイなどの果物に多く含まれます。何か一つでも果物を毎日取り入れるようにすると、理想的な食物繊維のバランスに近づくでしょう。

詳しい便秘対策の方法は、以下の記事で紹介しています。便秘薬以外の食事などの対処法を知りたい場合は、ぜひ参考にしてください。

さいごに

便秘薬は正しく適切に使うことが大切です。量を飲みすぎたり、長期間飲み続けることで思わぬ副作用が出たり、本来あるべき効果が出なくなってしまう場合もあります。

飲むとスッキリするからといって、頼りすぎることのないように気をつけましょう。便秘薬の代わりに整腸剤やサプリメントなどの力を借りるというのも方法の一つです。

ただし、便秘の状態によっては薬の力を借りた方が良いこともあるため、状況に応じて判断することが大切です。

そして、忘れてはいけないのが、食生活などの日頃の習慣です。生活を見直して、便秘薬を使う頻度や量を減らしていけるように工夫していきましょう。