整腸剤を処方してもらうメリットは?市販薬でもいいの?


お腹の調子が悪い時、整腸剤を処方してもらった方が良いのか、市販薬で対処すべきか迷いますよね。病院で整腸剤を処方してもらうと、どんなメリットがあるのでしょう。逆に、市販品でも大丈夫なのはどんな場合なのでしょうか?

この記事では整腸剤が処方される事例、処方薬のメリット、さらに市販品との違いについてお話します。

どんな時に病院で整腸剤を処方してもらえるの?

疑問を感じる女性

処方薬の整腸剤は、生菌製剤ともよばれ「腸内菌叢(そう)の異常による諸症状の改善」という効果が掲げられています。腸内菌叢というのは、別名腸内フローラとも呼ばれ、簡単にいうと、腸内細菌のバランスを整えるということです。

しかし、これだけでは、ちょっとわかりにくいですよね。

病院に行って整腸剤が処方されるのは、どのような症状や病気の時なのでしょうか?どんな場合に、整腸剤が使われるのか、例をあげて説明します。

食あたり、水あたりで下痢ぎみ、軟便

食あたり、食中毒、水あたりによる、下痢や軟便などの時に、腸内細菌の乱れを改善するために用いられます。下痢止めでは、原因となる悪い菌の排泄を遅らせてしまうため、整腸剤で様子をみることがあります。

胃腸炎、消化不良のとき

食べ過ぎた時、お酒を飲み過ぎたとき、消化に悪い食べ物を食べたときにも整腸剤が使われます。また、胃腸炎と診断されたときにも、整腸剤が処方されることがあります。

消化不良の時には胃に問題があることも多いのですが、同時に腸の調子が悪い場合には整腸剤も使われます。

便秘のとき

病院では便秘になった時には、主に便秘薬が処方されることが多いですが、医師の判断によっては整腸剤を使うこともあります。整腸剤は便秘薬よりも効果がおだやかで、即効性は少ないお薬です。でも、副作用や長期使用の点からみると、便秘薬よりも安全に使うことができます。

慢性的な腸の病気がある

下痢や便秘、軟便やお腹の張りなどの腸の不調をずっと繰り返す、というような場合には慢性的な病気が関わっている可能性があります。

クローン病や潰瘍性大腸炎では、軽症で初期の場合には整腸剤を服用して様子をみる場合があります。

参照:IBD 初期病変の拾い上げのコツ(畑田康政 著)

また、過敏性腸症候群の場合にも、整腸剤が使われます。効果にはバラつきがあるものの、総じて有効だとされており、経済的な負担も少ないことから、ガイドラインでも推奨されています。

以上、病院で整腸剤が処方されるケースについて紹介してきましたが、必ずしも整腸剤が処方されるとは限りません。お医者さんの判断によっては違うお薬が処方されることもあるため、よく相談するようにしてください。

参照:機能性消化管疾患診療ガイドライン2014

こんな時は病院を受診すべき

医者に相談する女性

整腸剤を飲むような症状が出たときに、病院を受診して処方を受けるべきか、市販薬で対処するか迷うかと思います。どんな時に、病院を受診すべきなのか解説します。

症状が重いとき

整腸剤を飲むときというのは、多くの場合が「お腹がゆるい」「下痢気味」「便秘がち」「お腹が張る」などの症状でしょう。

これらの症状は、市販薬でも対応できることもありますが、症状が重いときには、病院で処方を受けた方が安心です。下痢が続いて、脱水症状になると生命にも危険が及んでしまいます。

例えば、食中毒で、下痢が10日以上続く、激しい嘔吐、呼吸困難、意識障害などがある場合は、要注意です。甘くみないで、症状がひどい場合には受診することをおすすめします。

参照:全日本病院協会

便の状態、色などに異変がある

症状がひどい時といっても、自分では判断がつきにくいこともあると思います。まず、次のような症状があるかどうかチェックしてみてください。もし、当てはまる症状があれば、早めに病院に行くようにしましょう。また、自己判断するのは難しいため、不安ならばできる限り早い受診をおすすめします。

  • 便に血がまじっている
  • 便が黒っぽい
  • 便に白っぽい粘液がついている
  • 便が白っぽい液状
  • 発熱、発疹などの症状がある
  • 市販薬を飲んでも、1ヶ月以上症状が続いている

慢性的な疾患が疑われるとき

例えば、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎などの慢性的な腸の病気が原因になっているということもあります。この場合、市販薬では対処しきれないことも多いため、受診した方が良いでしょう。整腸剤以外にも、治療にはお薬を処方してもらうことができます。

市販薬でも大丈夫な場合って?

市販薬でも対処できるかどうか、自分で判断することは難しいかもしれません。

参考までに、市販薬を飲んで一旦様子を見てみても良い、と考えられるケースを紹介します。

  • 食べ過ぎ、飲み過ぎでお腹がゆるい、下痢をした
  • 日常的に起こりがちな、冷え、ストレス、食あたりなどによる下痢、軟便
  • 病気が特に関係していない慢性的な便秘
  • お腹がガスっぽい、便やおならのニオイが気になる

基本的には、特に原因となるような病気(基礎疾患)を持っていない場合に、市販の整腸剤を使うことができます。病気が関係している場合には、病院で治療を受けることが必要です。

注意を促す女性

市販の整腸剤については次の記事で詳しく種類別に紹介しています。自分の症状にあった整腸剤を選んで対処することがポイントです。

ただし、市販の整腸剤を飲んでから改善が見られない場合には、早めの受診をおすすめします。

整腸剤を病院で処方してもらうメリット

整腸剤は市販でも手に入るのに、わざわざ病院にいくのは面倒・・と思う方も多いと思います。しかし、病院で整腸剤をもらった方が安全ということもあります。処方された整腸剤を使うメリットについて解説しましょう。

医師の判断で選ぶから安心

自分で市販薬を選んで使うときには、お医者さんによる診察を受けないので、大事な病気を見逃してしまう可能性もあります。ちょっと心配に思う方も多いでしょう。

その点、病院で検査を受けたり、お医者さんの診察を受ければ、大事な疾患を見逃しにくくなるため安心です。また、整腸剤や症状を抑えるお薬の選択肢も多いので、効果的な治療を受けることができます。

市販より安くもらえるの?

整腸剤を病院で処方してもらった方が安くなるのか?という疑問も多いかと思います。

結論から言えば、ケースバイケースであり、安くなるとは限りません。

たしかに、例えば、お薬自体の値段は処方薬の方が安いことはあります。しかし、処方してもらうためには、病院代と調剤薬局での処方にかかる代金も必要です

短期の場合には高くついたり、長期に渡って服用する場合には、処方してもらった方が安いこともあります。

大事なのは値段が安いかどうかだけではなく、お医者さんの診察を受けることと、整腸剤の種類に違いが出るということです。金額的なことだけで判断しないようにしましょう。

注意を促す女性

市販品より強いの?

病院で処方してもらう整腸剤は市販薬のものよりも強いの?と疑問に思う方もいると思います。

整腸剤の場合、市販品と比べて医療用の方が配合量が多いこともあります。

例えば、「ビオフェルミン」を例にとって説明してみましょう。

【ビフィズス菌が含まれる量】

市販の新ビオフェルミンS錠剤

1日あたり:18mg

処方薬のビオフェルミン錠剤

1日あたり:36mg〜最大72mg まで

処方薬の方がビフィズス菌の配合量が多いことがわかりますね。

ただし、市販の整腸剤の場合は、処方薬とは違って、いくつかの配合成分が入っているものがあります。一概に、処方薬の方が効果が高いとは言いきれないわけです。

処方薬の整腸剤の特徴と市販品との違い

処方薬

では、市販の整腸剤と処方薬の整腸剤の違いについて、もう少し掘り下げて説明したいと思います。処方薬の種類、特徴と、市販品との違いについても説明します。

処方薬の整腸剤の特徴は?

処方薬の整腸剤の場合には、基本的に、生きた菌(生菌)だけが含まれ、生菌製剤(プロバイオティクス)とも呼ばれます。

ビフィズス菌、乳酸菌(ラクトミン)、酪酸(らくさん)菌、糖化菌などの菌だけで、他の成分は入っていません。例としては、次のような整腸剤が使われています。

  • ビオフェルミン
  • ラックビー
  • ミヤBM
  • ビオスリー

など

参照:整腸剤の使い分け(江頭かの子ら 著)

いずれも配合された生菌がお腹の中で効果を発揮して、腸内環境を整えます。ガスや便秘、下痢などの原因となる悪玉菌の繁殖を抑えて、腸の状態を正常に戻してくれます。

詳しい効果や使い方についての説明は、それぞれ次の記事で紹介しています。気になる方は参考にしてください。

市販品の方が実は役立つことも?

市販薬の方がなんとなく一般的に効果が弱そうなイメージがあるかもしれません。しかし、整腸剤に関しては、市販薬の方が使えることもあるのです。

その理由として、市販薬の場合には、生菌以外にも、直接的にガスを減らす成分、胃酸を抑える成分などが一緒に配合されているタイプがあります。市販品は、複数の成分から成る配合剤になっていることで、すみやかに症状を改善してくれる効果が期待できます。

ただし、市販薬で対処できるのは症状が軽い場合や、腸や全身の病気が関わっていない場合などが対象になります。

市販の整腸剤について詳しくは次の記事で解説しています。どんな症状かによっては、病院にいかないで市販薬で対処することもできます。選び方がわからない時には、店頭で薬剤師や登録販売者などに相談してみましょう。

参照:よくわかるOTC薬の服薬指導 第三版 (秀和システム)