下剤の種類別のおすすめは?効果の強い下剤は危険?!
執筆・監修:笹尾(薬剤師)
便秘で辛いときに下剤を使うなら、なるべく効くお薬を使って早くスッキリしたいと思うことでしょう。
下剤の種類によっておすすめの下剤の種類は変わってきます。また、効果が強い下剤をむやみに使うことはおすすめできません。下剤のおすすめの活用法と、比較的安全な下剤についても紹介していきます。
下剤の種類別におすすめのタイプ
下剤は種類によって、効果の強さも副作用も違います。安全に使うためにも、下剤を正しく選んで使うことが大切です。下剤の種類によって、どんな方におすすめか紹介します。
刺激性下剤
大腸を刺激して、動きをよくすることで排便を促すタイプの下剤です。腸を動かすので、効果に即効性があり、比較的効果が高いのが特徴です。
腸は自分の意識で動かすことができない臓器です。無意識のうちに腸が動くのは自律神経が支配しているからです。この動きを「ぜん動運動」といいます。
例えば筋力の低下した女性や高齢者など、ぜん動運動が弱い方の便秘には、刺激性下剤が効果的です。
おすすめのタイプ
- 旅行や環境の変化によって、一時的に便秘になってしまった
- 便秘が慢性的になって固く詰まって出せない
- ホルモンバランスの影響で生理前だけ便秘になる
- お腹のハリやスッキリしない感じがあるが、便意を感じない
膨張性下剤
水分を吸収して便を柔らかくし、腸の中で内容物を膨らませて腸を刺激する効果のある下剤です。市販薬の場合には、食物繊維(プランタゴ・オバタなどのファイバー)がよく使われています。効果が穏やかで、自然に近いお通じが期待できます。
おすすめのタイプ
- 便が少なくて出せない
- お腹が痛くなる薬は使いたくない
- なるべく自然な排便を期待したい
塩類性下剤
成分としては、酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムを含む下剤です。水分を腸から便の方に引き込んで、便を柔らかくして出しやすくするお薬です。便を柔らかくすることで、排便を促します。タイプを選ばずに一番使いやすい下剤です。
市販されている一般的なものとしては、スラーリアや3Aマグネシアなどがあります。
おすすめのタイプ
- 便が固くで出しにくい
- 痔になりやすい
- お腹が痛くならない便秘薬がいい
市販薬の種類については、次の記事で詳しく紹介していますので参考にしてください。
効果が強い下剤をおすすめしない理由
便秘薬を選ぶときに、とにかく良く効いて、早く効果の出るものを使いたいという方は多いと思います。しかし、便秘薬を強さだけで選ぶのは、あまりおすすめできません。その理由をお話したいと思います。
効果が強い下剤とは?
便秘で良く使われる効果の強い下剤は、「刺激性下剤」です。コーラック(大正製薬)、スルーラックS(エスエス製薬)など、市販薬の代表的な便秘薬の多くに刺激性下剤の成分が含まれています。
通常であれば、翌朝には効果があるので、とにかく早くスッキリさせたいならば、刺激性下剤が効果的です。
しかし、刺激性下剤は下剤の中でも、最も副作用に気をつけた方が良いお薬です。副作用と、長期服用によるデメリットがあるため、注意しなければいけないからです。
お腹が痛くなったり、下痢になりやすい
刺激性下剤は効果が高い反面、お腹が痛くなりやすく、下痢になることもあるというデメリットがあります。他の下剤でも、起きることはありますが、刺激性下剤では特に起こりやすい副作用といえます。
仕事や大事な用事などがあるときには、腹痛や下痢が起きてしまうと支障が出てしまうことも少なくないはずです。いつお腹が痛くなってトイレに駆け込むかわからない・・という状態で過ごすのは辛いですよね?
便秘になったら強い下剤を使い、再び便秘になったら下剤に頼るというのを繰り返すのは、依存にもつながるため、あまりおすすめの方法ではありません。
使いすぎや長期服用は危険である
下剤で気をつけなければいけないのが「使いすぎ」です。使いすぎると、次第に下剤が効きにくくなってしまいます。特に気をつけたいのは刺激性下剤です。量を増やしたり、長く使っていることで、大腸が刺激に慣れてしまって、効果が出なくなってしまうのです。
大腸が刺激に慣れてしまって、下剤無しでは便が出せないような状態になってしまうと危険です。下剤に依存してしまう「下剤依存症」にもなる可能性があります。
下剤の副作用については次の記事で詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
下剤のおすすめの使い方
下剤をあまり考えずに使いたいだけ使っていると、思わぬ副作用が起きてしまうかもしれません。下剤をなるべく安全に、効果的に使う方法をご紹介します。
なるべく頻度は少なくする
便秘がちで、毎日のように刺激性下剤を飲みたいと思われる方は多いと思います。しかし、刺激性下剤の頻度は週に1〜3日程度に抑えた方が良いでしょう。
毎日飲んだ方が安心だからといって、飲み続けると依存にも繋がるためおすすめできません。刺激性下剤は便が出なくて困ったときだけ使うようにして、便が出たらお薬は飲まないで様子を見るようにしましょう。
日頃は弱めのお薬などで対処しておく
便秘になったら、刺激性下剤を飲んで対処する。そんな対処方法を続けていると、また再び便秘になってしまうケースは少なくないでしょう。結局、強い刺激性下剤に頼らざるを得なく、量が増えてしまう可能性もあります。
刺激性下剤を使う頻度を減らすためには、便通をコントロールするお薬として、酸化マグネシウムのような塩類性下剤(緩下剤)、または整腸剤などがおすすめです。これらのお薬を続けて服用することで、便秘になりにくくなれば、刺激性下剤を使う回数も減ってくることでしょう。
酸化マグネシウムの便秘薬については次の記事で詳しく解説しています。もっと知りたい方は読んでみてください。
便秘改善に役立つ整腸剤については次の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
副作用が少なくて効果も高い刺激性下剤って?
副作用があるとはいえ、便秘の解消には刺激性下剤が必要なこともあるでしょう。刺激性下剤に頼らざるを得ないような便秘になったときに、比較的安全に使える下剤はあるのでしょうか?
アントラキノン系下剤はなるべく使わない
刺激性下剤にもいくつかの種類がありますが、特に気をつけたいのが「アントラキノン系」です。例えば、センナ、ダイオウ、アロエなどの生薬成分があります。
アントラキノン系下剤を長く使い続けることで、「大腸メラノーシス」という副作用を起こすことがあります。大腸の内側が黒くなって見えるだけでなく、便秘を悪化させる原因にもなるといわれています。
比較的安全な下剤とは?
刺激性下剤の中でも、比較的安全だとされているのが、「ピコスルファートナトリウム」です。病院からは「ラキソベロン」という名前のお薬が処方されることがあります。
市販では「ピコラックス(佐藤製薬)」、「ビューラックソフト( 皇漢堂)」、「ビオフェルミン便秘薬(ビオフェルミン製薬)」などがあります。
ピコスルファートナトリウムはアントラキノン系ではないので、「大腸メラノーシス」は起こさないといわれています。
ただし、慢性的に使うと慣れを起こしてしまう可能性はあるため、必要最低限に使うよう気をつけましょう。
詳しくは次の記事で解説していますので、下剤の副作用が気になる方はぜひ読んでみてください。
参照:お腹の張りを取れば腸は年をとらない!(松生恒夫 著)