便秘薬で下痢になるのはなぜ?正しい対処方法は


執筆・監修:薬剤師 笹尾

便秘薬を飲んだら、下痢をしてしまったという経験がある方はいませんか?下痢になってしまうと辛いし、不安になりますよね。

下痢してでも便秘薬を使って出したい、という方もいるかもしれませんが、あまりおすすめできる方法ではありません。

今回は便秘薬による下痢の対処法、下痢しにくい便秘薬、また下痢するときに考えられる病気などについて解説します。

便秘薬を飲んで下痢する理由は?

疑問を感じる女性

便秘薬を飲んで期待するのは自然なお通じですが、ときに下痢を起こしてしまうこともあります。なぜ便秘薬を飲んで下痢になってしまうのでしょう。

基本的な下痢のしくみ

下痢というのは、色々な要因によって小腸や大腸における水分の再吸収がうまく行われず、腸の運動が強くなりすぎることによって起こります。腸の中でまだ便になりきれていない、水分を多く含んだ内容物が液体状のまま排出されると下痢になります。

便秘薬で下痢する理由

便秘薬で下痢をする理由はいくつかあります。理由によって対処法も異なるので、まずは理由と原因を知っておくことが大切です。

便秘薬が強すぎるため

便秘薬を飲んで下痢したときには、便秘薬が強く効きすぎている可能性があります。

便秘薬の種類によっても下痢しやすさには違いがあります。特に大腸を刺激する「刺激性下剤」の場合には、腸管の運動が強くなるため、下痢を起こしやすくなります。

※刺激性下剤:センナ、センノシド、ダイオウ、ピコスルファートナトリウム、ビサコジルなど

便秘薬の量が多すぎるため

どんなに穏やかな便秘薬であっても、量が多いと効きすぎて下痢になることがあります。刺激性下剤では量を調整して使えるタイプが多いですが、最初から最大量で飲んでしまうと、下痢を起こしやすくなります。

また、便に水分を与える作用のある塩類性下剤は一般的に穏やかな効果がありますが、量を増やせば効果が強くなって下痢を起こすことがあります。

また、いつもと同じ量を飲んだとしても便秘の度合いや体調によっても、下痢になりやすさの違いが出てきます。

便秘薬が体に合っていないため

便秘には次のようなタイプがあります。

  • 弛緩性便秘
  • けいれん性便秘(過敏性腸症候群)
  • 直腸性便秘
  • 病気による便秘(大腸ガン、憩室など)

以上の中で、刺激性下剤が合わないタイプは「けいれん性便秘(過敏性腸症候群)」です。腸がけいれんして、緊張が強い状態であり、刺激性下剤を使うと腹痛や下痢を起こすことがあります。

コロコロとした兎のような便が出たり、便秘と下痢を繰り返している方は、けいれん性便秘(過敏性腸症候群)の可能性があります。下剤の使用には注意しましょう。

また、腸や全身の病気の影響で、便秘と下痢を繰り返してしまうこともあります。もし、気になるようであれば、一度お医者さんに相談しておきましょう。

便秘の種類について詳しくは次の記事で紹介しています。

参照:よくわかるOTC薬の服薬指導第3版(秀和システム)

便秘薬で下痢したあとに貧血症状が出るのは?

トイレで下痢をした後に、フラっと気が遠くなったり、貧血のような症状が出ることがあります。これは、便秘薬の副作用ということではなく、「迷走(めいそう)神経反射」によるものです。

迷走神経というのは、脳神経の1つで、腸の周りにもあります。排便時のいきみ、下痢や嘔吐など、何らかのきっかけで迷走神経が刺激されると、血圧を調整している自律神経のバランスが乱れます。

血圧が下がることで、立ちくらみや失神することがあります。血圧の低下で、脳に血液が行きにくくなるため、意識がもうろうとしたり、顔白が悪くなる方もいます。ひどい下痢のときは、安静を心がけましょう。

便秘薬を飲んで下痢したときの対処法

注意を促す女性

もし、便秘薬を飲んで下痢をしてしまったら、どう対処すれば良いのでしょう?下痢止めを飲んでも良いのでしょうか?下痢した時の対処法を紹介します。

服用を中止して様子をみる

便秘薬を飲んで下痢をしてしまったときは、服用を一旦中止してください。毎日排便があるのが理想ではありますが、無理に下剤を使う必要はありません。

通常、便秘薬の成分が外に排出されていけば、腸の状態は落ち着くと思われます。便が普通の状態に戻るまで様子をみましょう。

整腸剤を飲んで腸内環境を整える

下痢した後は、腸内細菌が外に排出されてしまうため、しばらくお腹の調子が悪い状態が続きやすくなります。普段の生活を送っていても自然に回復してきますが、もし早く回復したいならば整腸剤もおすすめです。

整腸剤はビフィズス菌、乳酸菌などが入っていて、腸内細菌のバランスを整えます。効果はおだやかなので、数日間続けてみると良いでしょう。

整腸剤については次の記事で詳しく紹介しています。

下痢止めで対処するのは適切ではない

便秘薬によって腸の動きがよくなっている状態を、下痢止めで無理に止めようとするのは安全な方法とはいえません。出そうとしているものを無理に止めることで、余計に辛くなることも考えられます。便秘薬の作用の方が強く、下痢を止められない可能性もあります。

下痢止めは使わないで、自然に治まるのを待ちましょう。あまりにひどいようならば、医師または薬剤師などに相談してください。

参照:ファーマトリビューン

お腹を温めて、安静にする

お腹が冷えていると下痢しやすくなります。

お腹を湯たんぽであたためたり、ブランケットを下半身にかけたり、白湯を飲んで温めてあげるのも効果的です。もし、夏場であれば、室温をあげたり、クーラーなどの冷気をさけましょう。

水分補給を心がける

下痢したときに、お腹が冷えそうだからといって水分を摂らないのはよくありません。下痢のときは、脱水を防ぐためにも水分補給することが大切です。さらに経口補水液の方が吸収効率が良いのでおすすめです。

便秘薬で下痢しないようにするには

処方薬

便秘薬を使って毎回下痢をしてしまう、下痢しやすいという方は便秘薬を正しく使えていない可能性があります。便秘薬で下痢しないようにする方法を紹介します。

便秘薬は少量から始める

どんな便秘薬であっても、まずは少量からはじめてみましょう。便秘がひどいと量を多く飲みたくなりますが、効果が強く出て激しい腹痛や下痢が起きることもあります。

市販の刺激性下剤の中には、調整できるタイプと調整できないタイプがあります。できれば調整できるタイプを選んで、最低用量から飲みはじめると良いでしょう。

便秘薬は効果が出るまでに8時間から12時間程度かかるのが普通です。効果が無いからといって追加服用すると強く効きすぎてしまいます。焦らずにしばらく様子を見てください。

しかし、体質によっては少量で使っても下痢を起こすことがあります。特に、センナ、センノシドのような刺激性下剤では下痢を起こしやすいので注意しましょう。

下痢をしにくい便秘薬を使う

便秘薬の中でも下痢を起こしやすいのは刺激性下剤です。なるべく下痢や腹痛を起こさないで、便秘を改善したいならば、「塩類性下剤」がおすすめです。

酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムを主成分とする下剤であり、腸を刺激しないので下痢や腹痛になりにくいタイプです。

もしくは、効果はもっとも弱くなりますが整腸剤を使うという手もあります。効果が出てくるまでには時間がかかりますが、長期的に服用しても副作用が起こりにくいので安心です。ただし、腎機能が低下している方や高齢者では副作用が起こりやすいため注意しましょう。

塩類性下剤について詳しくは次の記事を参考にしてください。

日頃から腸内環境を整えておく

便秘になりやすく、便秘薬を使うと下痢を起こしやすいという方は、普段から腸内環境が乱れていることも考えられます。

腸内環境の乱れは便秘の原因になることからも、普段から腸内環境を整えておくことが大切です。ヨーグルト、漬物、味噌などの発酵食品を毎日食べたり、食物繊維を意識して取り入れるようにしましょう。

整腸剤や乳酸菌を含む健康食品やサプリを活用するのもおすすめです。

詳しくは次の記事で便秘解消法を紹介しているので参考にしてください。

なお、下痢や便秘を繰り返すということであれば、過敏性腸症候群のような病気も考えられます。腸の状態が不安定になりやすい方は、一度お医者さんに相談してみましょう。

便秘薬を繰り返し使うのは危険

便秘薬で下痢になって困る・・という方の中には、便秘薬をくり返し使っている方も少なくないかもしれません。

便秘になる

便秘薬を使って出す

下痢する

再び便秘になる

便秘薬を使って出す

下痢

このような事をくり返しているのは、健康的で安全な方法とはいえません。腸にとっても負担になるばかりでなく、根本的に便秘を改善したことにはならないのです。

便秘薬を使い続けると、場合によっては腸が刺激になれて、お薬が効かなくなってしまうこともあります。ますます飲む量が増えて、下痢しやすくなる方もいるでしょう。

大腸の動きが悪くなって、自然な便意を感じにくくなってしまうこともあるため危険です。

便秘薬の副作用については次の記事を参考にしてください。

便秘薬を使うのは最低限にとどめ、運動や生活習慣を見直しましょう。また、根本的な腸内環境の改善を目指すならば、整腸剤や善玉菌入りの健康食品、サプリを活用してみるのも良いでしょう。