緩下剤の種類と特徴-安全で効果的な下剤とは
緩下剤(かんげざい)は効果を穏やかに発揮する下剤であり、いろいろな種類があります。便秘の状態や体質によって使い分けると効果的です。また、穏やかとはいっても、副作用がないということではありません。
今回は、緩下剤の種類と違いを紹介し、安全な使い方についてもお話します。
目次
緩下剤とは?
便秘薬といっても種類がいくつかあり、その一つに緩下剤があります。便秘薬の種類と、緩下剤の位置づけについて、知っておきましょう。
緩下剤の位置づけ
便秘薬を医学的な用語では「瀉下剤(しゃげざい)」といいます。瀉下剤の中には、「峻下剤(しゅんげざい)」と、「緩下剤(かんげざい)」があります。
現在、よくつかわれてる下剤は、主に「緩下剤」に当てはまります。
緩下剤に対して、効果が早いタイプが峻下剤です。
峻下剤は飲んでから、効果が出るまでにかかる時間が短いお薬です。代表的なものは解毒に使われる「ヒマシ油」ですが、現在ほとんど使われることはありません。
便秘の治療には、効果に時間がかかる緩下剤を使うことが一般的です。
※ただし、分類によっては、緩下剤(かんげざい)とセンナやピコスルファートのような刺激性下剤を分けて分類されることもあります。
この記事では、刺激性下剤を含めた緩下剤全般について解説していきます。
緩下剤は穏やかに効く下剤?
緩下剤は穏やかに作用して、便秘を改善する下剤のことです。効果が出るまでに、8時間から12時間程度、またはそれ以上時間がかかります。
効果までに時間がかかっても、刺激性下剤のように効果が強いものもあります。
一般的によく飲まれる便秘薬は寝る前に飲むと、翌朝に効果があらわれます。そのようなタイプは緩下剤に当てはまります。
峻下剤は小腸に働いて急激に消化途中の内容物を外に出す効果がありますが、緩下剤は大腸に働きます。吸収の終わった食べ物の残りカス、腸内細菌などから作られる大便を出しやすくする効果があります。
緩下剤の種類と特徴
緩下剤は効果がゆっくり、穏やかに効くとはいっても、種類によってその効きめには差があります。どのような違いがあるのか見ていきましょう。
膨張性下剤
- オオバコ、フスマ、プランタゴ・オバタ種子(サイリウム)
- バルコーゼ、コロネル(医療用医薬品)
主に食物繊維を成分とする下剤があてはまります。腸内で膨張して、腸の内容物のカサを増やして、ぜん動運動を促します。食物繊維の摂取が少なくて便秘になっている方や、病院では過敏性腸症候群の治療に使われることもあります。
市販薬では、スルーラックデトファイバー(エスエス製薬)、コーラックファイバー(大正製薬)に含まれます。
塩類性下剤
酸化マグネシウム、硫化マグネシウム、マグラックス、マグミット、マグコロール(医療用医薬品)
浸透圧の作用によって、体内の水分を腸内に引き込んで便に水分を与え、柔らかくする作用があります。お腹が痛くなりにくく、比較的に安全に使えるため、幅広く使われています。
ただし、塩類性下剤であっても大量に用いると「峻下剤」となって、強力な下剤にもなります。
酸化マグネシウムについて、詳しくは次の記事を参考にしてください。
浸潤性下剤
ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DDS)・カサンスラノール
界面活性作用(油と水の親和性をよくする作用)によって、便の表面と水分をなじみやすくし、硬くなった便に水分を与えてやわらかくします。さらに腸のぜん動運動も促します。
市販薬のスルーラックプラス(エスエス製薬)、コーラックⅡ(大正製薬)に、DSSは使われています。
刺激性下剤
- センノシド、センナ、ダイオウ、ピコスルファートナトリウム、ビサコジル
- プルゼニド、アローゼン、ラキソベロン、ベンコール配合錠、ヒマシ油(医療用医薬品)
- 新レシカルボン坐剤、テレミンソフト坐薬(医療用医薬品)
腸を刺激して、ぜん動運動を促すはたらきのある下剤です。主に市販薬でよく使われているタイプになります。
刺激作用が高く、効果が強めであるため、緩下剤と区別されることもあります。
効果が良いので便秘がひどい時には効果的ですが、使いすぎによって効果が出にくくなることもあるため注意が必要です。
刺激性下剤の副作用について、詳しくは次の記事を参考にしてください。
参照:熊本大学薬学部
参照:愛知県薬剤師会
緩下剤の正しい使い方とは?
緩下剤を使う時には正しく、適切なタイプを選んで使うことが大切です。刺激性下剤や塩類性下剤などの使い方について説明していきます。
刺激性下剤を使い続けない
緩下剤の中でも、刺激性下剤は効果が高く、日本では便秘薬の中で最もよく使われています。飲むとスッキリと便が出るので、ついつい頼りたくなってしまいがちです。
しかし、刺激性下剤を使うのは、便秘がひどい時、急性の便秘などに限るべきです。例えば、旅行中、環境の変化、女性の生理前など、急性の便秘にはとても有用なお薬です。
効くからといって、慢性便秘の方が使い続けると、だんだんと効果が出なくなってしまいます。下剤依存症になってしまうこともあるため危険です。
下剤の使いすぎ、飲み過ぎについては次の記事を参考にしてください。
参照:久里浜医療センター
代わりに塩類性下剤や整腸剤を活用する
刺激性下剤を頻繁に使っていた方が、急激に使うのをやめてしまうと、本当に便が出なくなってしまい危険です。
そこで、活用できるのが、大腸への刺激作用が少なく、長期的な副作用も起こりにくい「塩類性下剤」や「整腸剤」です。
例えば、塩類性下剤の酸化マグネシウムは、市販薬でも手に入ります。便を柔らかくする作用があり、穏やかに効いて便秘を改善します。整腸剤は腸内細菌のバランスを整えて、便秘の原因になる悪玉菌を抑えます。
刺激性下剤が手放せないという方は、併用して使うことで、刺激性下剤の量を減らしていくと良いでしょう。
参照:お腹の張りを取れば腸は年をとらない!(松生恒夫 著)
お薬だけに頼らないで、生活習慣も変える
便秘を解消するには、お薬だけに頼っていてはいけません。便秘の元となる病気がある場合は別ですが、一般的な便秘においては生活習慣、食習慣やストレスが大きく関係しています。
食物繊維、水分摂取、発酵食品を摂取するなど、便秘改善に役立つ食習慣を取り入れていきましょう。運動不足を解消すること、適度なストレス発散も心がけると効果的です。
便秘解消法について詳しくは次の記事を参考にしてください。
4.緩下剤にも副作用はある?
緩下剤は穏やかに効くイメージがあるため、安全だと思っている方もいるかもしれません。しかし、緩下剤にも種類によって、それぞれ副作用があります。
また、刺激性下剤のように、妊娠中の使用に注意が必要なお薬もあります。また、塩類性下剤は腎機能が低下している方や、高齢者は副作用が起こりやすいため注意しなければいけません。
次に当てはまる場合には、自分で緩下剤の種類を選ぶよりも、お医者さんに相談することをおすすめします。
- 病気を治療中の方
- 便秘を引き起こす原因となる疾患や病気がある方
- 妊娠・授乳中の方
- 慢性的な便秘で悩んでいる方は、
- 急激な便秘、出血、腹痛などを伴う場合
など
緩下剤の副作用については、次の記事を参考にしてください。