腸内環境ってなぜ大事なの?腸のことをもっと知ろう!


なぜ腸内環境が注目されているのでしょうか?

食生活や生活習慣の乱れ、加齢に伴い腸の働きは低下してしまいます。腸内環境が悪化すると病気へのリスクを上げてしまいます。

少しでもそのリスクを減らして悩みを解消するには、腸内環境を改善することが重要な鍵を握っています。

この記事では、腸内環境の基本を押さえたい方に、腸内環境が乱れる原因や改善によって得られるメリット、そして対処法についてお話していきます。

腸内フローラ

腸内環境とは?

「腸内環境」という言葉は知っていても、あまり良くわかっていないという方も多いのではないでしょうか?

まずは、腸内環境とはどのようなことを示すのか、役割などを解説します。

腸内細菌のバランス

腸内環境のことを語る上で避けることができないのは、腸内細菌の存在です。

腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見(ひよりみ)菌の3つに大きく分けることができます。それらは次のようなバランスを保っていることが、理想的な腸内環境の指標になります。

腸内環境の理想的なバランスは2:1:7

  • 善玉菌 20%
  • 悪玉菌 10%
  • 日和見(ひよりみ)菌 70%

悪玉菌が優勢になると腸内環境が悪化して、影響が身体に出てしまいます。

善玉菌が優勢な状態を目指すのが理想的です。そして日和見菌というのは、善玉菌と悪玉菌のどちらか強い方の味方をする習性があります。全体の割合をみても日和見菌が占める割合が多く、日和見菌を味方につけることこそ、腸内細菌のバランスを整えるうえでは大切な鍵となります。

腸内細菌の役割

腸内細菌の役割は、次のように全身との関わりがあります。

  • 病原菌の排除
  • 消化を助ける働き
  • ビタミンを合成する
  • ホルモンの原料になる物質(前駆体)を脳に送る
  • 免疫力の維持

消化と排便の役割くらいしか、普段は腸のことを意識していないのではないでしょうか?例えば、驚くべきことに免疫細胞の約70%は、腸内で作られています。つまり、腸は免疫を司る重要な役割を持っているわけです。

また、心のバランスを保つにも、栄養素であるビタミンを合成するにも、腸は必要な器官になります。胎児として発生するときにも、腸は最初に形成される部分でもあり、人間にとっては脳と同じくらい大事な器官だといえます。

参照:こころとからだの免疫学

様々な悩みは腸内環境の悪化が一因

便秘や下痢などお通じの悩みはデリケートであり、抱え込んでしまうこともあるのではないでしょうか?ダイエット、アレルギー、精神面の悩みには、腸内環境が関係しているかもしれないのです。どのような悩みと腸内環境に関係があるか説明していきます。

便秘・下痢・お腹の不調・おなら

便秘とは、腸に便が停滞している状態です。便秘になれば、肌荒れが起こるようになり免疫も低下していろいろな引き金にもなってしまいます。

一方、下痢の場合は、食中毒のような病原体が原因の場合や、精神的な影響が大きく不安や緊張が関係していることもあります。

自律神経に乱れが起こり腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)や消化液の分泌が過剰になってしまい引き起こされるケースもあります。

細菌感染や暴飲暴食が原因による下痢もありますが、思い当たることがないのに下痢が起こる場合は、過敏性腸症候群のような病気が原因となっている可能性も考えられます。

さらに、おならがたくさん出る、臭いが強い場合は、悪玉菌が増えている状態から起こっています。たんぱく質や脂質をエサとして増える悪玉菌は、有害物質やアンモニアなどの臭いがあるガスを発生させるためです。

便秘になると便が腐敗して、悪玉菌が増えるという悪循環に陥ってしまうため注意しなければいけません。

太りやすくなる

ダイエットを目指しても上手くいかない、食べていないのに太りやすいという場合も、腸内環境が関係していることが疑われます。食物繊維や脂質をダイエットで極端に制限をすることで、大便が減るだけではなく、大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)も鈍くなり便秘を引き起こしてしまうのです。

近年、腸内細菌の研究では痩せている人には「痩せ菌」といわれる腸内細菌が多いということもわかっています。痩せて健康的な体型を維持したいならば、腸内細菌を味方につけることも有効です。

参照:「腸内細菌の驚愕のパワーとしくみ」(辨野義己 著)

アレルギー症状

アレルギー反応は、人間が本来持っている防御システムが、アレルゲンになる物質(食べ物、花粉、ハウスダストなど)に対して過剰に反応することで起こります。
花粉症やアレルギー性皮膚炎は、代表的なアレルギー疾患であり悩まされる方も多いものです。
アレルギー症状と腸内環境が乱れていることの関連の深さは、日本でも花粉症患者を対象に行った研究報告もあるほどです。

参照:腸内細菌の驚愕のパワーとしくみ(辨野義己 著)

精神面(不安・イライラ・落ち込み)

腸と脳は、密接な関わりがあり「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」とも呼ばれます。

「緊張する面接を控えていて下痢になった」「転職でストレスがたまり、便秘になった」などのような現象は、普通に体が健康な方でも経験することがあるでしょう。

落ち着きと安定感をもたらすセロトニン、幸福感を増幅するドーパミンは、腸で合成されて脳で反応します。腸内環境が悪くなるとそれらの物質が少なくなることが分かっています。

その結果、不安が増大し落ち込みやすくなり、イライラしてしまったりしてしまい精神面にも影響を与えてしまうのです。

免疫力の低下

「風邪を引きやすい」「体調を壊しやすい」などの体調変化は免疫が関係しているとも考えられます。

腸で作られる免疫細胞は、病原菌やウイルス、カビ、といった人間に有害なものが侵入したときに、防御する役割を持っています。

腸内環境が悪化していると免疫細胞の機能も落ちてしまいまい、有害な物質への抵抗力が弱まってしまうのです。腸内環境を整えることが、全身の免疫力アップにつながります。

腸内環境が乱れる原因は?

疑問を感じる女性

腸内環境は加齢によるだけではなく、食事や生活習慣など、さまざまな要因から簡単に乱れてしまいます。普段の暮らしを振り返ってみると、思い当たることがあるかもしれませんよ。

加齢

腸内環境は、加齢に伴って悪化していきます。60歳を過ぎると腸の働きが鈍くなり、ビフィズス菌や乳酸菌が減り、それによって悪玉菌が増えてしまいます。赤ちゃんの時は腸の中にはビフィズス菌がいっぱいですが、年齢と共にどんどん減ってしまうのです。

腸にとって悪い習慣

腸は普段直接覗くことができないので、どうなっているかわかりません。そのため、ついつい腸に悪い習慣を続けてしまいがちになります。普段の生活で何気なく取り入れている習慣が、もしかしたらあなたの腸を乱しているかもしれませんよ。

偏った食生活

食事をする女性

現代社会では、魚よりも肉を好む欧米化した食事が多くなっています。肉類は悪玉菌のエサになりやすく、魚の良い油が不足しがちになることも腸にはよくありません。

手軽に食べられるファストフードやコンビニ食では、食物繊維が不足するために便が固くなってしまいます。

不規則な生活と睡眠不足

朝ごはんは食べずに出かけて、昼はコンビニ食、夜は遅く帰って寝る前にドカ食いをしてしまう。または、忙しくて寝る時間を削っている、昼夜逆転しているなど、生活リズムそのものが不規則になっている方はいませんか?

不規則な生活は、自律神経のバランスまで乱してしまいます。自律神経は腸のうごきを支配しているため、生活の乱れは腸の乱れに直結してしまいます。

食物繊維の摂取不足

食物繊維

食物繊維が不足していると便秘になりやすくなる、というのはご存知の方も多いことでしょう。

食物繊維は、便のかさを増やしたり、善玉菌のエサになり、老廃物をからめとるような働きを持っています。

便秘の予防のためには、食物繊維を意識して摂ることを心がけるようにすることがとても大切です。

参照:腸内細菌の驚愕のパワーとしくみ(辨野義己 著)

運動不足

運動不足によって筋力が落ちると、便秘を招いてしまいます。

日常から運動を行う習慣が少ないと、腸の動きも停滞しがちになり、排便のリズムが乱れがちになってしまいます。特に女性の場合はもともと筋量が少ないので、便秘になりがちです。

冷え

冷えは腸の動きにも影響します。体の冷えを放置してしまうと、血行不良になるために腸の活動を低下させてしまいます。特に冬場や夏のクーラーがきいている時期になると、便秘になりがちな方は要注意です。

腸内環境が改善するとどんなメリットが?

やる気に溢れる女性

腸内環境の改善を目指すと私たちの体へどんな影響があるのでしょうか?

肥満予防

腸内環境が悪化すると太りやすくなるということは、改善することで痩せやすい体を作ることができます。

例えば、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸に脂肪の蓄積を防ぐ機能があることが解明されています。

短鎖脂肪酸は、多くの腸内細菌が作り出すのですが、中でもビフィズス菌がキーマンになります。できるだけ、ビフィズス菌を摂る食生活を実践すれば、肥満の予防に役立つかもしれません。

参照:腸内細菌による宿主のエネルギー恒常性維持機構の解明 京都大学

糖尿病予防

糖尿病患者の血液中に腸内細菌がいるかどうかの研究によれば、日本人2型糖尿病の人では50人中14人に血液中に腸内細菌が見つかりました。これは何を意味しているかというと、2型糖尿病患者は腸内環境の乱れにより、腸内細菌が腸内から血流中へ移行しやすいことが分かります。
血液中に移行した腸内細菌によって、慢性的な炎症を引き起こす可能性にも注目されています。

参照:日本人2型糖尿病患者における「腸内フローラのバランスの乱れ」を証明

便秘の改善

大便といえば、食べ物のカスというイメージを大半の方が持つでしょうが、消化液・細胞粘膜などが30%、食べカスが30%、残りは、腸内細菌が30%も占めているのをご存知ですか?腸内細菌が少ない状態では、便も十分に作られなくなってしまいます。

特に善玉菌が多い環境は、腸の動きをよくして、快便をもたらしてくれます。便秘薬に頼るばかりではなく、便秘を根本的に改善するためにも腸内細菌のバランスを整えることが大切です。

免疫力を向上させる

免疫細胞を活性化させるためには、腸内環境のバランスを整えることが必要となります。

かつては、小腸が免疫システムをつかさどる役割を担っていると考えられていたのですが、近年の研究ではさらに大腸でもその役割があることも解明されました。

この腸管免疫系を正常に働かせるには、腸内環境にも着目すると良いでしょう。

精神面の安定

人間の感情を左右する神経伝達物質は脳が作っていると思いがちになりますね。

しかし、その物質になる前の前駆体(生成する前の状態)は、腸で作られています。
前駆体を脳へ送り出すのも腸内細菌が担っているのです。

  • 神経伝達物質セロトニン(落ち着きと安定感)
  • ドーパミン(幸福感を増幅する)

脳と腸は、お互いの活動にも影響を与える関係にあるのをご存知ですか?
腸内環境が悪化すると上記の物質が減り、感情に歯止めが効かなくなりイライラ、不安などに陥ります。

その結果、脳の不安材料がさらに腸の活動へ影響を及ぼすのでさらにセロトニンが減ってしまう悪循環に陥ってしまいます。

精神面の安定を保つためには、腸内環境を改善することも大切なのです。イライラしがちな人は、自分の腸の状態も見つめ直してみましょう。

アレルギー予防

花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギーを引き起こすのは、元を正せば免疫機能を担っている腸内環境が大きく関与していることが分かっているからです。腸内環境の改善を意識することで、免疫機能を正常にすればアレルギー予防も期待できるようになります。

美しい肌をつくる

便秘になると吹き出物や肌荒れに悩まされるようになります。腸内環境の乱れで悪玉菌が増えると体内には毒素が溜まってしまい、その影響で吹き出物や肌荒れの原因を作り出します。

腸内環境を改善すれば、便秘が解消できるだけではなく、肌荒れなどのトラブルの原因を無くすことができるようになるのです。

腸内環境を改善する方法

喜ぶ女性

腸内環境を良くすることは、心身に様々な効果があることをお伝えしました。

悩みを解消するために、実際に腸内環境を良くするのを目指したいけれど、具体的にどんな方法があるのかが一番気になる点ではないでしょうか?

食生活を見直す

腸内環境のバランスを整えるためには、まず、食生活を見直すのが基本です。腸が喜ぶのは、乳酸菌、食物繊維、オリゴ糖を含む食品です。上手くメニューに取りいれて行くようにしましょう。腸内環境のバランスを保つためにも、食生活の見直しは、一時的ではなく継続していくことがとても重要です。

腸内環境を改善する食べ物については、次の記事を参考にしてください。

運動を心がける

排便をスムーズにするには、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)や排便に関わる筋肉をつける必要もあるので普段から適度な運動が欠かせません。
有酸素運動、ストレッチ、体操、ツボの刺激を意識して行うようにしましょう。運動を継続して行くことで、排便に必要な筋力をつけることもできるようになります。

腸に良いストレッチ方法は次の記事で特集しています。

乳酸菌の摂取

乳酸菌やビフィズス菌は日々入れ替わって、悪玉菌との攻防を繰り返しています。乱れがちな腸の状態を整えるには、日々乳酸菌やビフィズス菌を取り入れることを意識しましょう。発酵食品を必ず食べるようにすると、少しずつ腸が変わっていきますよ。ポイントは自分にあった乳酸菌を選ぶことです。

自分にあった乳酸菌の選び方については次の記事で紹介しています。

ただ、食生活の改善を目指すのは、腸内環境にとって欠かせないことなのですが、毎日のメニューを考えるのが面倒、忙しくて手間のかかる調理ができないなどの理由もあり継続しづらいこともあるでしょう。そのような時には整腸剤や乳酸菌サプリを活用する方法もあります。無理なく続けられる方法を選びましょう。

まとめ

病気の悩みやダイエットの悩み、美容の悩みなどは、腸内環境の悪化と関係していることが分かったでしょうか。腸内環境の改善をすることは、通常では便秘や下痢など排便の悩みを解消することだと考えがちですが、それだけに限らず様々な病気のリスクを減らして予防することや病気の改善を目指せることが様々な研究で判明しています。

健康をできるだけ維持して行くためにも、腸内環境の改善を意識した生活を目指してみてはいかがでしょうか。