便秘で浣腸を使うのは危険?浣腸の正しい使い方とは


執筆・監修:笹尾(薬剤師)

みなさんは、浣腸を使ったことはありますか?便秘が辛くて仕方ないとき、ここぞという時に頼りになるのが浣腸です。でも、使うのが怖いとか恥ずかしいといった悩みもあると思います。今回は、浣腸の効果と使い方、また副作用についてもお話していきます。

便秘に効く浣腸ってどんなお薬?

浣腸は、便秘で困った時に頼りになるお薬ですが、どんなお薬なのか正しく知っているでしょうか?浣腸の特徴と効果について説明したいと思います。

浣腸の特徴とは

浣腸は、お薬を肛門から入れて便を出しやすくするお薬です。飲み薬と比べて、直接お薬が腸に届くので効果が早く現れて、効き目が出やすいという特徴があります。飲み薬を飲んでも便が出ない時や、子供や高齢者で飲み薬が飲めないときにも役に立ちます。

浣腸の中身はなに?

浣腸は、容器の中に液体のお薬が入っていて、それをお尻から注入して使います。お薬の成分は医療用、市販薬ともに「グリセリン」が使われています。

グリセリンというのは、油のようなもので、成分そのものは安全です。浣腸は保存性を高めるための防腐剤と水が共に入っています。

浣腸はどうして便秘に効果があるの?

グリセリンが入っている浣腸の薬液をお尻の方から注入すると、グリセリンが腸壁に届いてすべりを良くします。すると、腸が刺激されて溜まっていた便が出しやすくなるのです。

直接的に、腸に物理的な刺激を与えて、便を出しやすくする効果があるので効果が早く出ます。注入したグリセリンは腸から吸収されずに、便と一緒に外に出てきます。

浣腸はこんな便秘におすすめ

浣腸は日常的に毎日使うようなタイプのお薬ではありません。次のような状況の時に限って使うのがおすすめです。

注意を促す女性

即効性が欲しいとき

浣腸が便利なのは、使ってからお薬の効果がすぐに現れるということです。効果には個人差があるものの、だいたい3分から10分程度で効果が出ます。

飲み薬の場合は、大抵8時間程度はかかるため、寝る前に飲むと翌朝以降に効果があらわれます。対して浣腸の場合には、飲み薬では効かない場合や、今すぐ便を出したい時に役立ちます。

排便のタイミングを調整したいとき

いつまでに便を出しておきたい、という事ってありませんか?例えば、大事な会議がある時、試験のとき、子供の発表会や運動会など、「便意が来てしまったら困る!」というシーンがあるでしょう。

または、旅行先のように急な環境の変化で便秘になってしまった時にも役立ちます。

浣腸は効果がすぐに出るので、出したい時に出すことができるお薬です。大事な予定があって、先に排便を済ませておきたいときは活用すると良いでしょう。

赤ちゃんやお年寄りに

赤ちゃんやお年寄りも便秘になりますが、困ったことに便秘薬を飲むことが難しいこともあります。浣腸であれば、他の人が手伝ってあげれば誰でも使うことができるので、飲み薬が飲めないときにも便利です。

便秘に効く浣腸の種類

浣腸には、市販薬と病院から処方される医療用があります。どのような種類があるのか、具体的に紹介していきます。

市販薬の浣腸

<イチジク浣腸(イチジク製薬)>

イチジク浣腸

市販の浣腸として古くからあり、有名なのが「イチジク浣腸」です。イチジク浣腸にはさまざまな種類があり、中に入っている液体の量や、挿入するノズルの長さなどの違いがあります。

大人の場合は「イチジク浣腸30」、赤ちゃんの場合は「イチジク浣腸10」、また介護などで他の人につかう場合には、ノズルの長い「イチジク浣腸40E」などを選ぶと良いでしょう。

<ジャバラク浣腸(健栄製薬 )>

zyabaraku-kantyou

浣腸の本体部分がジャバラ構造になっているので、液体を出しやすく、内部に液残りしにくいタイプです。健栄製薬は医療用の浣腸としても、良く使われる製造メーカーです。

<ケンエー浣腸(健栄製薬 )>

kene-kantyou

ケンエー浣腸は10gから50gまでの容量と、ケンエー浣腸L40、ケンエー浣腸S40があります。年齢によって、または介護の有無によって種類を使い分けましょう。

処方薬の浣腸

<ケンエーG浣腸50%液>

市販薬と同じくグリセリンを成分とする浣腸薬であり、便秘や腸の病気の排便時に使われます。液体の量によってサイズがいくつかあり、小さいものでは30mLから500mLのものまであります。

<グリセリン浣腸液50%>

ムネ製薬、丸石製薬のメーカーがあり、中身はやはりグリセリンです。容量は30mL、150mLなどがあります。通常は30mLから60mLが使われます。

なお、浣腸と似たタイプのお薬としては坐薬があります。坐薬については、次の記事で紹介しているので、気になる方は読んでみてください。

浣腸の使い方

浣腸は使い方が少し特殊です。決められた使い方を守らないと、思わぬ副作用が出ることもあるため、よく理解してから使うようにしましょう。

使用前の準備

浣腸は液体が冷たいと刺激が強すぎたり、下痢しやすくなるので、人肌程度に温めてから使います。洗面器などに体温より少し高めの38℃から40℃程度のお湯を用意して、浣腸を容器ごと浸けてあたためます。

取り出して温かいと感じるようになったら使用してください。ただし、温めすぎはやけどの原因になるので注意してください。

市販の浣腸の場合には、用量が少ないため温めずに使えることもありますが、冬場などは温めてから使うと良いでしょう。

注入時について

浣腸のノズルキャップを外してから、浣腸のノズルを肛門に入れます。もし、スムーズに入らない場合には、ノズルの先端に少し薬液を出してから使うと滑りやすくなります。

容器を手で押しながら薬液をゆっくりと注入していきます。

使用時は急に便意をもよおすことがあるので、トイレの中で使うことをおすすめします。

注入後から排便するまで

注入したら、すぐに便意を感じることもありますが、なるべく十分に便意が強まってから排便するようにしてください。個人差はありますが、目安としては3分から10分は我慢するようにしましょう。

浣腸の副作用と注意点は?

浣腸は効果が高いだけに、副作用にも気をつけなければいけません。また、使いすぎると思わぬ問題が起きることもあります。あらかじめ副作用と注意点はよく理解しておきましょう。

腹痛と下痢に注意する

浣腸を使うと腸が刺激されるので、排便と前後に強いお腹の痛みを感じたり、下痢を起こすことがあります。もし、便が出たとしても、その後しばらく痛みや下痢が続くこともあるので、外出時などは注意しましょう。

また、使用後には、立ちくらみ、肛門部が熱くなる感じ、不快感などを伴うこともあるので気をつけましょう。

浣腸しても出ない場合は?

浣腸を2、3回使ったのに、便が出てこないということがあれば、ただちに使用を中止してください。なんらかの病気が関係していることもあるため、早めにお医者さんに相談することをおすすめします。

使ってはいけない人は?

浣腸を使ってはいけない人、または注意した方が良い場合は以下の通りです。

  • 医師の治療を受けている人
  • 妊娠または妊娠している可能性がある人(流産、早産の危険性があるので使用しないことが望ましい)
  • 1歳未満の乳児
  • 高齢者
  • はげしい腹痛、吐き気、嘔吐、痔出血のある人
  • 心臓病の診断を受けたことがある人

参照:ケンエー浣腸

使いすぎは危険?

浣腸を使い続けることは大変危険です。

腸が刺激になれてしまい、次第に効かなくなってしまうことがあります。お薬に頼らないと排便できないようになる可能性もあるので危険です。

浣腸は非常に効果が早く、優れているので、つい頼りたくなってしまいがちですが、ここぞという時だけ使うようにしましょう。

また、浣腸に限らず、便秘薬を使いすぎることはおすすめできません。副作用や効果の減弱など、使い続けることによるデメリットが多いからです。

詳しくは次の記事で解説しているので、便秘薬を使う方は一度読んでおくと安心です。

参照:イチジク浣腸ホームページ

参照:ケンエー 浣腸ホームページ

参照:浣腸工業会