便秘におすすめの漢方は?タイプ別漢方薬の選び方
便秘を体質から改善したいという方には漢方薬がおすすめです。漢方薬はそれぞれの体質に合った処方を選べるので、西洋薬の便秘薬では効かなかった方にも効果が期待できます。
ただし、便秘薬と同じように長く飲み続ける場合には副作用に注意しなければいけません。
この記事ではタイプ別に便秘におすすめの漢方のご紹介と、飲む上での注意点、副作用についても詳しくお話していきます。
漢方で便秘は改善できるの?
漢方というと皆さんはどんなイメージがありますか?漢方は効かない、優しいという印象があるかもしれませんね。効果が弱いという印象のある漢方で、果たして便秘は改善できるのでしょうか?また、なぜ漢方が効くのでしょうか。
漢方とは?
漢方は自然の生薬がいくつか合わさって作られたお薬です。生薬の原料としては、植物だけでなく、動物や鉱物などが使われることもあります。
漢方は1つ1つの生薬が合わさって働くことで、さまざまな症状に効果があります。また、漢方では西洋薬とは違って、部分的な症状を治すというより、その人全体の体質や原因など、全体の状態を改善していくという特徴があります。
人の体を構成している、「気、血、水」に働いて、巡りを良くすることで、不調を整えていくことができるのが漢方薬なのです。
便秘に効く漢方はどこで入手する?市販で買える?
漢方を手に入れるには、薬局で自分で買う方法、漢方薬局で相談する方法、漢方を処方してくれる病院にかかる方法があります。
ただし、自分にあった処方がわからない場合には、漢方薬局または病院(漢方外来など)で処方してもらった方が良いでしょう。お医者さんや薬剤師さんなどが体質をみて、あなたに合った漢方薬を選んでくれますよ。
便秘に漢方をおすすめする理由
便秘で悩んでいて便秘薬に頼っているという方や慢性的な便秘に悩んでいる方には漢方薬がおすすめです。便秘の治療に漢方をおすすめする理由を詳しくお話していきます。
自分にあった漢方薬を選べる
西洋薬の便秘薬(下剤)と違って、それぞれの便秘の原因や体質に合わせて処方を選ぶことができるのがメリットです。便秘薬が効かなかった場合にも、漢方薬ならば効果が出る場合があります。
下剤よりもクセになりにくい
いわゆる下剤(大腸刺激系の便秘薬)の場合には、長く飲み続けることで効きにくくなったり、クセになってしまう場合があることが問題です。
漢方薬も種類によっては注意が必要ではありますが、西洋薬の下剤と比べると成分的に効きが悪くなったり、クセになるようなリスクは少ないといえます。
ただし、センナやダイオウなどの生薬を含む漢方薬を長い期間飲む場合には注意しましょう。これらの大腸刺激系の生薬成分は飲み続けることで、大腸が慣れてしまい、お薬が効かなくなってしまうことがあります。
自然なお通じに近い排便が期待できる
下剤ではお腹が痛くなったり、お腹が緩くなるので嫌という方も多いのではないでしょうか。漢方薬の場合には、複数の生薬が合わさって働くことで、自然なお通じが得られやすいというメリットがあります。
ただし、漢方薬であっても効果が強すぎると下痢をすることもあるので気をつけましょう。
また、下剤の場合は便秘体質そのものを治療することはできません。ですが、漢方薬の場合には体質改善から取り組むことができます。
副作用が少ない
漢方薬は西洋薬と比べると効き目がシャープではないため、副作用も起こりにくいといわれています。副作用が起こりにくいので、長く飲み続けることで体質改善に使えるのが便秘薬のメリットです。
ただし、副作用が起きることもあり、必ずしも安全というわけではありません。副作用については次の記事でも詳しく紹介していますので、気になる方は読んでみてください。
タイプ別おすすめの漢方薬
漢方薬は西洋薬とは違って症状を治すのではなく、体全体の状態を整えることで便秘を治療していきます。そのため、体質ごとに効果のある処方が異なります。自分にあった漢方薬を見つけることが大切です。体質やタイプごとにおすすめの漢方薬を紹介します。
慢性的な便秘、他に特に気になる症状がない人
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
配合生薬:大黄(ダイオウ)、甘草(カンゾウ)
効果:便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和
コメント
便秘に効く漢方の代表的な処方の1つ。大黄が大腸を刺激し、甘草は大黄の作用を和らげて副作用を減らしてくれる役目があります。
便秘が特に気になる方向けの漢方薬ですが、比較的効果が強めなので、下痢に注意です。長期服用もおすすめできません。
注意点:妊娠中、妊娠の疑いがある人は服用しないでください。
授乳中の方が服用した場合、母乳を通して子供が下痢することがあります。
胃腸が弱い人、体力が弱っている人が服用すると、効果が強すぎて下痢することがあります。
飲み続けることで、大腸が刺激に慣れて効きにくくなることがあります。
乾燥しがちなコロコロ便で体力がない人向き
麻子仁丸(ましにんがん)
配合生薬:麻子仁(マシニン)、芍薬(シャクヤク)、枳実(キジツ)、厚朴(コウボク)、大黄(ダイオウ)、杏仁(キョウニン)
効果:体力中等度以下で、ときに便が硬く塊状なものの次の諸症:便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和
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大黄甘草湯ではお腹が痛くなってしまうような体力がない方、乾燥してウサギのようなコロコロ便しか出ない方に向いている漢方薬です。市販薬でも購入できますが、丸い形をした丸剤になります。
注意点:授乳中の服用は避けてください。
妊娠中や妊娠の可能性がある場合にはよく相談してください。
胃腸が弱くて下痢しやすい人は注意してください。
参照:クラシエ漢方療法推進会
体力があり、お腹周りが気になる、便秘がちな人
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
配合生薬:当帰(トウキ)、薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、山梔子(サンシシ)、連翹(レンギョウ)、薄荷(ハッカ)、生姜(ショウキョウ)、荊芥(ケイガイ)、防風(ボウフウ)、麻黄(マオウ)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、白朮(ビャクジュツ)、桔梗(キキョウ)、黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)、滑石(カッセキ)
効果:体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:
高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症
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ダイエット用としても使われることのある漢方薬です。熱をさまし、水分のめぐりを良くし、便通を改善します。お腹周りに皮下脂肪が多く、太鼓腹といわれるような方におすすめですが、体力が弱い方が使うと下痢をしてしまうことがあります。
注意点:体力が弱い虚弱な方、胃腸が弱くて下痢しやすい方にはおすすめできません
授乳中の服用は避けてください。
妊娠中や妊娠の可能性がある場合にはよく相談してください。
心臓疾患や高血圧などの治療を受けている場合には相談してください。
お腹が冷えてハリを感じる方に
大建中湯(だいけんちゅうとう)
配合生薬:山椒(サンショウ)、人参(ニンジン)、乾姜(カンキョウ)、膠飴(コウイ)
効果:腹が冷えて痛み、腹部膨満感があるもの
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お腹のハリや膨満感を感じる方で、体が冷えやすい方やお腹を壊しやすい人におすすめの漢方です。腸の筋力が弱い「弛緩性便秘」の方にも効果が期待できます。病院から処方される医療用の漢方として使われています。
注意点:妊娠中や授乳中の場合には良く相談してから服用すること
肝機能に問題があると言われた事がある場合には服用前に相談すること。
参照:ツムラ大建中湯
肩こりイライラがあり便秘がちな女性
加味逍遙散(かみしょうようさん)
配合生薬:柴胡(サイコ)、薬(シャクヤク)、当帰(トウキ)、茯苓(ブクリョウ)、蒼朮(ソウジュツ)、山梔子(サンシシ)、牡丹皮(ボタンピ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、薄荷(ハッカ)
効果:体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症注)、不眠症
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女性の更年期障害、月経不純などに用いられることの多い処方ですが、気のめぐりを良くして、便秘も解消されることがあります。ストレスが多くて、肩こりやめまいを感じやすい人にもおすすめの漢方薬です。
注意点:妊娠中や授乳中の場合には良く相談してから服用すること
胃腸の弱い人は注意して服用してください。
参照:加味逍遙散エキス顆粒
便がコロコロと乾燥している高齢者向け
潤腸湯(じゅんちょうとう)
配合生薬:地黄(ジオウ)、 当帰(トウキ)、 黄芩(オウゴン)、 枳実(キジツ)、 杏仁(キョウニン)、 厚朴(コウボク)、 大黄(ダイオウ)、 桃仁(トウニン)、 麻子仁(マシニン)、 甘草(カンゾウ)
効果:便秘
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麻子仁丸と同じくコロコロと乾燥した便の方に向いています。水分を便に与えるだけでなく、血流を良くする生薬も入っているので産後や月経後の便秘にも効果があります。麻子仁丸には配合されていない甘草が含まれるので効果はやや穏やかです。
注意点:妊娠中や授乳中の場合には良く相談してから服用すること
飲んですぐに効果が出るタイプではないので、続けて服用する必要があります。
参照:ツムラ潤腸湯エキス顆粒
便秘に効果のある市販の漢方薬
市販でも便秘に効果のある漢方薬は買えます。どんな種類があるのかご紹介します。
タケダ漢方便秘薬
大黄甘草湯の処方から作られているお薬です。錠剤タイプになっているので、粉薬や漢方の苦味が苦手な方には飲みやすいでしょう。
参照:タケダ漢方便秘薬
ワカ末漢方便秘薬
調胃承気湯(チョウイジョウキトウ)という処方が元になったお薬です。慢性及び急性の便秘のどちらにも、すぐれた排便を促します。
参照:ワカ末漢方便秘薬
クラシエ 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
しぶり腹といわれる症状に効く漢方で、便秘があるにも関わらず出ない場合や、残便感があって腹痛を感じる方におすすめの漢方です。
参照:クラシエ 桂枝加芍薬湯
ツムラ漢方 桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)エキス顆粒
お腹が張って痛みを感じる便秘、排便があってもスッキリしない方におすすめです。乾いたコロコロした便が出て、すぐにまたトイレに行きたくなるような場合に向いています。
漢方を飲む上で気をつけるべきこと
漢方薬は飲み方に独特な決まりがあります。正しく飲まないと、思うような効果が出ないということも考えられます。漢方ならではの決まり事を予めよく理解しておきましょう。
飲み続けないと効果がない?
漢方薬は一般的に効果が出るまでに時間がかかり、続けないと効果がないと良くいわれています。たしかに、効果が現れるまでには時間がかかる場合もあり、長い場合には月単位で続けないと効果が感じられないかもしれません。
しかし、例えば大黄甘草湯のように比較的効果が早いタイプの漢方薬もあります。効果が出るまでにかかる時間は種類による違いや個人差があるので、しばらく様子を見ると良いでしょう。
ただし、飲み続けても効果がない場合には、医師または薬剤師などに相談することをおすすめします。
飲むタイミングは空腹時?
漢方薬は種類によって寝る前に飲むものもあれば、食間または食前に服用する場合もあります。食間というのは食事と食事のあいだのことです。
いずれにせよ、漢方薬は空腹な時の方がお薬の吸収が良いため効果的だといわれています。
飲むタイミングについては市販薬の場合にはお薬の説明書、病院からもらった場合には医師の指示に従うようにしてください。
漢方薬って本当に安全なの?
漢方は安全で副作用がない、という風に思っている方は多いのではないでしょうか?実は漢方も使い方によっては思わぬ副作用が起きることがあります。どんな副作用に注意したら良いのか、対処法などについてお話します。
漢方薬でも副作用は起きる
漢方薬は自然由来の生薬でできているから安全というのは、正しくはありません。漢方薬もお薬であり、副作用が起きることがあります。
漢方薬において注意が必要だといわれているのが、「偽アルドステロン症」「間質性肺炎」「肝炎」「胃腸障害」などの副作用です。成分にもよりますが、漢方薬を併用したりする場合や、もともとの体質やアレルギーによって起きることがあるので気をつけましょう。
また、特に便秘に効く漢方薬の場合には、妊婦さんや授乳中の服用には注意してください。ダイオウ、センナを含む場合など、漢方によっては妊娠中、授乳中は服用を控えた方が良いものがあります。出産に影響したり、お子さんの体調に影響する場合があります。
下剤と同じ大腸刺激系の成分に注意
特にセンナ、ダイオウ、アロエなどの生薬成分には注意が必要です。これらは下剤にも含まれていることがある成分です。
アントラキノン系下剤に分類され、長く使い続けると慣れや依存になりやすいため注意しなければいけません。慣れて効かなくなると、正常な便意も起こりにくくなるため大変危険です。
大黄甘草湯のように、漢方薬に成分として使われている場合があるため気をつけましょう。
センナやダイオウなどの生薬成分と他の刺激系下剤の副作用については次の記事で詳しく解説しています。対処法についてもお話しているので、ぜひ読んでみてください。