産後の便秘で考えられる原因と4つの解消法を紹介!
出産という大仕事を終えたママ。赤ちゃんのお世話の大変さに加えて、体の不調もあらわれがちです。とくに悩まされる人が多いのは便秘。おっぱいをあげているママも多いので、安易に便秘薬も飲めないですね。
ツライ産後の便秘の原因と解消法について、授乳中の便秘薬情報も加えて解説していきます。
目次
産後の便秘の原因
産後は、妊娠前、妊娠中にお通じが良かった人でも便秘になりがちです。産後に便秘になる原因は以下の6つがあります。
会陰切開、帝王切開の傷への不安
出産時の会陰(えいん)切開や帝王切開の傷が気になってトイレで力めないことが、産後の便秘によく見られる原因です。トイレで力んでしまうと傷が開いてしまうのはないかと恐れてしまうからです。
傷は痛むしデリケートな場所なので気になるかもしれませんが、会陰切開の傷も帝王切開の傷も排便で力んで開くことはまずありません。安心して、傷は気にせずに、がんばってうんちを出してください。
授乳による水分不足
産後、赤ちゃんにおっぱいをあげている人も多いと思いますが、母乳を出すためには体からそれだけの水分を出しています。母乳から出る水分は、1日に600ml~800ml。それだけママの体からは水分が失われているんですね。
水分不足になるとうんちも硬くなります。硬いうんちは出にくいので便秘になるというわけです。便秘が続くとさらにうんちは腸の中で硬くなり、便秘は慢性化してしまいます。母乳をあげているママは水分を意識して多めにとらなければなりません。
便意の我慢をしすぎ
便意を我慢するのも便秘の原因です。産後は、慣れない赤ちゃんのお世話で忙しくてゆっくりトイレで用を足す暇がなくなってしまいますね。便意をもよおしたタイミングでなかなかトイレに行く時間がとれず、ついつい我慢してしまいます。
便意の我慢は便秘の大敵。うんちを我慢し続けると「直腸性便秘」とよばれる便秘を引き起こすといわれています。便は肛門につながる直腸や、その前のS状結腸にたまりますが、便意を我慢し続けていると便がたまったというサインがおかしくなり、脳が便意を感じにくくなってしまいます。すると直腸の感覚器も鈍ってうんちはどんどん出なくなり、便秘は悪化してしまいます。
出られないうんちは、大腸で水分が奪われて硬くなってしまい、カチカチに固まってたまってしまいます。
便意が来たら我慢せずに即トイレが大切です
睡眠不足
産後の赤ちゃんとの生活が始まると、イレギュラーなことだらけ。ママはいきなり不規則な生活に陥ります。赤ちゃんが、夜昼なく泣くので睡眠不足になりますね。
睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こします。体が寝ている時に腸を活発に働かせる副交感神経と、体を動かし腸の動きを休ませる交感神経のバランスが崩れて、腸だけでなく全身の健康状態がおかしくなります。腸の働きも弱まったり、あるいは収縮しすぎて痙攣したりとうまくバランスがとれず、その結果、便秘になってしまいます。
産後ストレス
ストレスも便秘を引き起こします。産後は慣れない子育てで不安を覚え、精神的にストレスを感じることが多いと思います。
ストレスがかかると体が緊張し、副交感神経の働きが鈍くなります。するとうまく排便できなくなってしまいがちです。精神的なストレスは便秘につながります。
運動不足
産後は出産という大仕事を終えたばかりですから、体も安静にしなければなりません。そのため筋力が弱くなります。また安静にする期間が終わっても、どうしても赤ちゃんとお家の中に引きこもらねばならず、運動不足になりがちです。
運動不足だと、腸が刺激されず動きが悪くなります。すると便が腸内を動かないので、便秘がちになってしまいます。
産後の便秘!授乳中だからお薬を飲まない対処法 4選
産後の便秘に悩むママは、赤ちゃんに授乳している方が多いので、便秘薬を飲むのは不安ですね。
しかし産後のママは、赤ちゃんのお世話だけでも大変すぎるので、便秘解消に難しいことや手間のかかることはできませんね。そんな方のために、便秘を少しでも改善するといわれる、比較的簡単にできる食事や日常生活のポイントを4つご紹介します。
水分を意識してとる
原因のところでもご紹介したように、授乳中のママは母乳を出すために、1日に1L近い水ふ分を自分の体から出しています。十分に水分補給してないと水分不足になって、うんちも硬くなってしまいます。便秘の方は、できるだけ意識して水分をとりましょう。
普通のお水がベスト、ジュースやコーヒーや緑茶はほどほどに。ジュースは糖分のとりすぎですし、コーヒーや緑茶は利尿作用があるのであまり水分補給に役立ちません。
ただし、今まで水を飲んでなかった人が急に大量に飲んでも、おしっこに出るだけで体に吸収されません。1度には200ml以下、できるだけ1口ぐらいにして回数を増やします。
水道水は塩素が入っていて、腸内細菌を死滅させる恐れがあるのでミネラルウォーターがベストです。もしくは浄水器を利用した方がよいでしょう。
ミネラルウォーターは、便秘のためには軟水よりも硬水の方がよいといわれています。日本人にとって硬水は馴染みがありませんので、慣れないうちは苦手意識があるかもしれません。しかし排便を促すカルシウムやマグネシウムが含まれている硬水の方が便秘には効果があるようです。
タイミングは朝の起き抜けに飲むとよいといわれています。胃腸が刺激されて、お通じが出やすくなります。お水は冷たい方が美味しいですが、あまり冷たいものを取りすぎると胃腸が冷えて、消化機能が落ちてしまいます。なるべく常温で飲みましょう。
オリーブオイルをとる
便秘改善のために油を摂るのは効果的といわれています。便秘によいのは「オリーブオイル」です。
オリーブオイルは、昔の薬理学の教科書には子どもの下剤の薬として載っていた時期もあり、排便を促す効果があるといわれています。
オリーブオイルが便秘改善に効果があるといわれるのは、含まれるオレイン酸に以下のような働きがあるからです。
- 小腸のぜん動運動がおこるから
- コレステロール値を調整する効果があるから
- 抗酸化作用があるから
オレイン酸は、腸で吸収されるのに時間がかかるため、小腸を刺激して腸の「ぜん動運動」を活発にしてくれます。ぜん動運動が活発になると腸で溜まっていたものが、先に送られていくのでうんちが出やすくなるのです。
またオレイン酸には、血液中のコレステロール値を調整する効果があります。また抗酸化作用もあり、血管を丈夫にしたり血流をよくするので、腸の機能を向上させてくれます。
目安は毎日大さじ1杯~2杯程度といわれています。そのままオリーブオイルを飲むのはツライので、パンにつけたりスープに入れたり、お料理にかけたりといろいろな料理に加えてみましょう。
乳酸菌や食物繊維をとる
毎日の食事で乳酸菌や食物繊維をなるべくたくさん摂るようにしましょう。
乳酸菌は、腸内の善玉菌を増やして悪玉菌を減らし、便秘に効果があるといわれています。乳酸菌が多い食品はヨーグルトが思い浮かびますが、ヨーグルトだけでなく、みそや納豆、漬物などにも乳酸菌が含まれているので、伝統的な和食もよいでしょう。
また食物繊維は、腸の中のお掃除をしてくれて、便秘を改善する効果があります。食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がありますが、「玄米」や「イモ類」は不溶性食物繊維が多く、とりすぎるとうんちが硬くなってしまいます。
キウイやバナナなどフルーツは水溶性食物繊維が多くてオススメです。
詳しくはこちらの記事でも紹介しています。
しかし産後、ただでさえ赤ちゃんのお世話で大変なのに、便秘にいい食事を考えて、お料理を作るのも大変ですね。できるだけ手間をかけずに乳酸菌をとるには、サプリメントを活用することもできます。使ってみるのも方法の1つです。
なるべく歩く、運動をする
赤ちゃんがいると、ジムに通ったりランニングをしたり改まって運動するのは難しいので、日常生活の中でなるべく体を動かしましょう。腸の働きが活発になりお通じがよくなります。
出産後少なくとも3週間ぐらいは産褥(さんじょく)期です。なるべくムリをせずに安静にして、体が元に戻るのを待ちます。その後いわゆる「床上げ」をしてママも日常生活に戻ることができます。しかし個人差があるので自分の体と相談してムリをしないように。
赤ちゃんをベビーカーに乗せたりやだっこをして近所を散歩したり、家の中でストレッチや簡単な筋トレをしたりするといいですね。とくに腸の後ろにある「腸腰筋」を刺激すると便秘解消のために効果があります。
産後に便秘薬は飲んで大丈夫?
日常生活で便秘を解消しようとしても、なかなか難しい場合もありますね。慣れない子育てだけでも大変なのに、便秘を我慢するのは辛すぎます。そんな場合は、ムリに我慢せずに便秘薬を使う手もあります。
授乳中に飲んでも大丈夫な便秘薬と大丈夫でない便秘薬があります。大丈夫でない便秘薬には、母乳に移行して赤ちゃんのうんちもゆるくするタイプのものがあるので注意が必要です。
授乳中の便秘薬について飲んでいいものと悪いものをご紹介します。お薬を飲む時は、素人判断をせず薬局の薬剤師さんかお医者さんに相談した方がよいでしょう。
飲むことができる便秘薬
次のお薬は母乳への移行がなく、授乳中の方も使用可能といわれています。
- 酸化マグネシウム
- ピコスルファートナトリウム水和物
- 整腸剤
酸化マグネシウム製剤
酸化マグネシウムを主成分にした便秘薬は、妊婦にも授乳中にも使われる便秘薬です。酸化マグネシウムは、うんちを軟らかくして、出やすくします。
酸化マグネシウムは、刺激が少ないお薬です。腸内の内容物に水分を引き寄せて軟らかくする効果や、腸内の内容物が水分を含んで増量することで腸が刺激されて、うんちが軟らかくなって出やすくなる効果があります。
ただし腎臓に病気がある人の場合は、血中のマグネシウム濃度が上がり、副作用が起きるので注意が必要です。また心臓病の人も注意が必要です。
「酸化マグネシウム」は、ドラッグストアや薬局で売っている市販薬もありますし、お医者さんに処方してもらうものもあります。使う時は、薬局の薬剤師さんに相談して購入するか、病院で処方してもらった方が安心ですね。
酸化マグネシウムの処方箋薬
- マグラックス
- マグミット
酸化マグネシウムの市販薬
- 3Aマグネシア(フジックス)
- 酸化マグネシウムE便秘薬(建栄製薬)
- スラーリア(ロート製薬)
- ミルマグLX(エムジーファーマー)
- スルーラックデルジェンヌ(エスエス製薬)
詳しくは次の記事も参考にしてください。
ピコスルファートナトリウム水和物
ピルスルファートナトリウムは、母乳にほとんど移行せず、授乳中でも母乳への影響はないと言われています。
大腸の粘膜を刺激して腸の働きを活発にしてうんちを出す種類の便秘薬です。
お薬が効きにくくなる耐性やクセになる習慣性についても、他の刺激性の便秘薬と比べると少ないといわれていて、小児科でも処方されます。
穏やかといっても刺激性の便秘薬には習慣性の問題やお腹が痛くなることもありますので、ピコスルファートナトリウムを使う時は自己判断せずに、薬剤師さんやお医者さんに相談してください。
ピコスルファートナトリウムの処方薬
ピコスルファートナトリウムの市販薬
- ビューラック・ソフト(皇漢堂製薬)
- ピューラックスルー・ソフト(皇漢堂製薬)
- ビオフェルミン便秘薬(ビオフェルミン製薬)
- ピコラックス(佐藤製薬)
整腸剤
ビフィズス菌やラクトミンなど、腸まで届く乳酸菌が配合されて腸の働きを整える効果があります。
整腸剤は基本的に授乳中も飲むことができます。ビフィズス菌や乳酸菌のような生菌が含まれ、おなかの中にもともと入っている細菌を取り入れているだけです。おなかの中の善玉菌を増やすことで悪玉菌を抑えて、便秘予防に効果があるといわれています。
整腸剤はいろいろな種類がありますが、授乳中にも飲んで大丈夫な市販薬については以下の記事を参考にしてください。
産後のひどい便秘に浣腸は使える?
浣腸も産後に使うことができる便秘の薬です。母乳に移行しませんので、授乳中でも使うことができます。成分はグリセリンです。
浣腸は、直腸内に直接グリセリンを入れることで滑りを良くして、硬くなったうんちを素早く出す効果があります。即効性があって3分から10分ほどで確実に効き目があるといわれています。
効き目ありますが、使いすぎると自分で便意を感じにくくなってしまいます。ひどい便秘の応急処置として使って、常用しないようにしてください。
授乳中に避けるべき便秘薬
便秘薬の中でも母乳に移行して赤ちゃんに影響があって、赤ちゃんの便がゆるくなる可能性があるものもあります。
- センナ
- センノシド
- 大黄
- アロエ
- カスカラ
などが含まれる便秘薬です。
これらの成分は多くの便秘薬に含まれています。漢方や生薬といわれるお薬にも含まれていますが、効き目は強く下剤依存症になる可能性も指摘されています。
お医者さんの判断を仰ぐ
授乳中のお薬情報について書きましたが、便秘薬に関しては、ぜひ自己判断を避けて病院でお医者さんの判断を仰ぎましょう。たかが便秘だからと自己判断していたら、万が一、深刻な病気の症状という場合もあるからからです。
病院は、産後あまり日がたってないならば、出産した産婦人科で便秘についても相談するといいでしょう。とくに出産後の数日間の入院中にお通じがまったくないなど、便秘の症状がある場合は、恥ずかしがらずに、退院前にお医者さんに相談するといいですね。お薬を処方してくれたり、便秘解消のアドバイスをしてもらえることもあります。また授乳中のお薬についても適切なアドバイスをしてもらえます。
産婦人科をわざわざ訪れるのは大変な場合などは、家の近くの内科や消化器内科を訪ねてもいいでしょう。できれば産婦人科で紹介状を書いてもらうといいですね。
まとめ
産後は便秘が起こりがちです。ツライ便秘ですが、水分を十分とることや、食生活の改善や運動で産後の便秘に対処しましょう。
それもなかなか難しい場合は、ムリに我慢せずに、授乳中でも大丈夫な便秘薬があります。しかし便秘薬に頼りすぎるのもよくありませんので、なるべく食生活や日常生活の改善で治しましょう。
便秘が解消されて、ママも赤ちゃんもすこやかな日々が送れますように。
参照:よくわかる便秘と腸の基本としくみ(坂井正宙 著)
参照:『おなかの張り』をとれば腸は年をとらない!」(松生恒夫 著)