便秘解消に食物繊維 – 正しい食べ方とオススメの食材は?
みなさんは「食物繊維が不足すると便秘になる」という話を耳にしたことはありませんか?
たしかに食物繊維を多く摂る人は、そうでない人に比べ、便秘になりにくい傾向があるようです。でもよく考えてみたら、そもそも食物繊維って本当に便秘解消に効果があるのでしょうか?
今回はそんな素朴な疑問を解決しながら、どのような食物繊維を含む食材を選べば良いのか、具体例を挙げて説明していきたいと思います。
目次
そもそも、人はなぜ便秘になるの?
厚生労働省の調査によると、便秘に悩む人の数は実に660万人に登ると推測されます。これだけ多くの現代人が抱える症状なのですから、便秘の原因は実に様々です。遺伝的な要素もありますし、後天的な事柄が原因の場合もあります。
この後天的な要素に、以下のような状態が関係していると言われています。
- 不規則な生活
- 食生活の乱れ
- 朝食を抜く
- 月経前症候群
- 冷え症
- 開腹手術後の腸管癒着症などの副作用
- 薬の副作用
参照:快腸!絶好腸!快便力 松生恒夫(著)
食物繊維が腸内で果たす重要な役割とは
前の項目にも書きましたが、便秘の原因はまさに人それぞれ。ですが便秘の解消には、やはり食物繊維が役立ちます。そこで「食物繊維って実際のところ、本当に便秘に効くの?」と疑問に思っている人のために、食物繊維が腸内で果たす役割について説明しましょう。
食物繊維とは消化されない成分のことで、小腸から大腸まで未消化のまま到達してしまう成分を指します。
このように、消化できない食べ物は、わたしたちの身体にとって不要だと考えられていた時代もありました。ですが、大腸の病気が多い欧米に比べ、アフリカではその数が極端に少ないということから、それまでの常識が一変しました。
中でもアフリカ人と欧米人の1日の便の量を比較してみたところ、アフリカ人の方が5倍近くも多かったという研究データが出て、研究者達を驚かせました。
その後「消化されやすい食材ばかりを食べていると、消化された後の残りカスが腸内に長く留まり、なかなか排泄されず、身体にとって有害な状態に変化してしまうのではないか」という結論に至りました。これが悪玉菌の正体です。
この悪玉菌を減少させる役割を果たすのが、未消化のまま大腸内で移動を続ける、食物繊維というわけです。
食物繊維の主な特徴として、水を吸収するという性質があります。これにより便を柔らかくし、嵩(かさ)を増やすことで排便を促す効果があります。
腸内環境に問題がなければ、便は多ければ多いほど早く排便されます。これは食物繊維で嵩増しされることにより、刺激を受けた腸内でぜん動運動が促進され、よりスピーディーに排便されるからです。また、食物繊維は大腸で分解されると短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん:腸内細菌が作り出す有機酸)に変わります。この脂肪酸の中に含まれる酪酸(らくさん)は、大腸の働きを助けます。
ですから食物繊維が腸内環境を整え、便秘の解消に役立つ食材であるというのも納得ですね。
ただし、身体に良い食材だからと言って摂り過ぎは禁物です。成人の1日の目標摂取量は約24gですから、これより多過ぎるとお腹を壊す原因になります。(ちなみに日本人の平均的な食物繊維摂取量は1日約14gと報告されています)
参照:快腸!絶好腸!快便力 松生恒夫(著)
参照:よくわかる便秘と腸の基本としくみ 坂井正宙(著)
参照:厚生労働省 食物繊維の必要性と健康
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違い
食物繊維には水溶性と不溶性があり、一般的に食物繊維を含む食材にはこれらの成分が両方とも含まれています。
ただし同じ割合というわけではありません。水溶性が多かったり、あるいは不溶性が多かったりするので、その割合を知り、自分の体質に合った食物繊維をチョイスする必要があります。
以下にそれぞれの食物繊維の主な特徴をまとめてみました。ちなみに水溶性:不溶性の黄金比率は1:2と言われています。これに相当する食材に納豆があります。
水溶性食物繊維の特徴
水に溶ける性質を持つ食物繊維を指します。
腸内で水分を含むと、ヌルヌルとしたゲル状の物質に変化するのが特徴です。水分を含んだ便は柔らかくなるため、体外にスルッと排出されやすくなります。
一般的に不溶性食物繊維を多く含む食材の方が多いため、十分な量の水溶性食物繊維を摂るためには、意識して以下のような食材を選ぶ必要があります。
- めかぶなどの海草類
- こんにゃく
- 納豆
- アボカド
- オクラ
- なめこ
- 押麦など
不溶性食物繊維の特徴
水に溶けない性質を持つ食物繊維を指します。
水分を吸収することで大きく膨らむという特徴があり、その結果、便の嵩(かさ)を増やし、ぜん動運動を促す働きがあります。
ただし重度の便秘の人が、この不溶性食物繊維を摂取し過ぎると、腸内に留まっていた便からも水分を吸収してしまうことになり、かえって便が硬くなり便通を悪くしてしまいます。
便秘が気になる人は、まず水溶性食物繊維を多く含む食材で便を排出させてから、不溶性食物繊維を摂取するように心掛けましょう。
- 野菜全般(特にサツマイモ、レタスなど)
- 玄米、食パンなど
- 茹であずき
- 茹でたエンドウ豆など
参照:便活ダイエット 小林弘幸(著)
困った時の食物繊維たっぷりメニュー
普段は自炊している人も外食メインの人も、どうせ食べるなら食物繊維を豊富に含んだメニューを選びたいものです。ここでは手軽に作れるメニューを中心に腸内をキレイにするレシピをご紹介します。
押麦ごはん
押麦には豊富な水溶性食物繊維が含まれています。ごはんを炊くときに混ぜるだけで、手軽に水溶性食物繊維を摂ることができます。
きんぴらごぼう
水溶性&不溶性ともに含有量の多いごぼうは、食物繊維の王様です。さらに善玉菌のエサとなるオリゴ糖も含んでいますから、便秘解消の強い味方。
熱を加えることで消化・吸収されやすくなりますから、きんぴらごぼうなどにして、ご家庭の常備食にしてみてはいかがでしょうか。
オクラ+納豆
オクラのネバネバ成分ペクチンは、水溶性食物繊維です。そこへ『水溶性:不溶性=1:2』という黄金バランスを誇る納豆をプラスすることで、水溶性食物繊維の豊富な一品の出来上がり。オクラのペクチンは茹でると、さらに吸収率が高まりますから、茹でてから食べやすい大きさに切って納豆と混ぜましょう。
アボカドサラダ+モロヘイヤ
バランス良く食物繊維を含み、油分も多いアボカドは腸内の潤滑油としても活躍してくれる貴重な食材です。そこにヌルヌル成分の豊富なモロヘイヤをプラスし、サラダの上にトッピング。このヌルヌル成分には水溶性食物繊維が豊富に含まれていますから、便秘解消にはもってこいの一品です。
そば
うどんかそばか迷ったら、とりあえずそばを注文しましょう。そばの食物繊維の含有量は主食の中でもトップクラスです。
さらには血液サラサラ成分のルチンも摂取でき、まさに一石二鳥なメニューと言えます。
参照:便活ダイエット 小林弘幸(著)
まとめ
便秘を解消するには、排便力を強くすることが大事です。その排便の力を助けるのに食物繊維は大いに役立ちます。
水溶性と不溶性ともに同じ食物繊維ではありますが、それらが果たす役割は大きく異なります。ですから自分の便秘の状況を見極め、賢く食物繊維を取り入れることが大事です。
ただし、便秘の症状が長引くようでしたら、病気が隠れているサインかもしれません。その場合、自己判断は禁物です。速やかに消化器内科やかかりつけ医を受診しましょう。