抗生物質で腸内細菌が死滅?!腸への影響を減らす方法とは


抗生物質を飲んだら下痢や便秘になったという経験はありませんか?

病気の原因になる細菌を抑えるために効果的な薬である抗生物質ですが、腸内細菌にも影響してしまう場合があるのです。

どうして抗生物質は腸内細菌にも作用してしまうのでしょう。
また、腸への影響を減らす対処法はあるのでしょうか?抗生物質と腸内細菌の関係について解説していきます。

抗生物質で腸内細菌が死んでしまう?!

疑問を感じる女性
風邪をひいた時や歯を抜いた時などのように、細菌への感染が疑われる場合や、細菌への感染を防止したい場合に、抗生物質が処方されることがあります。

治療のためには必要な薬ですが、腸内細菌も殺してしまう場合があるので抗生物質を服用する際には注意が必要です。

抗生物質を飲むと体にはどのような影響があるのでしょうか?

抗生物質を飲むとお腹の調子が悪くなる?

病院で処方された抗生物質を飲んでから、何となくお腹がゆるい、下痢になった、または便秘になったという経験がある人はいませんか?
抗生物質を飲むとお腹の調子が悪くなることがあります。

抗生物質は必ずしも強くて危険な薬というわけではありませんが、種類や体質によっては副作用としてお腹の調子が悪くなる症状があるため注意しなければいけません。

下痢や便秘を起こすのは腸内細菌への影響が原因

抗生物質を飲んでから下痢や便秘、軟便の症状が現れるのは、抗生物質が腸内細菌にも作用してしまうことが原因です。腸内細菌を殺してしまい、腸内細菌のバランスが崩れてしまうことがあるのです。

本来、抗生物質は人間にとって悪い作用をする細菌を抑えるために使われる薬です。
例えば、手術をした際に抗生物質を使用するのは、傷からの感染を防ぐためで化膿や炎症を防ぐ意味があります。
また、気管支炎にかかった場合には原因菌をやっつけるために抗生物質を使います。

しかし、抗生物質は必ずしも狙った細菌だけに効くとは限らず、腸内細菌のバランスを崩してしまい下痢などの症状を引き起こす場合があるのです。
特に、下痢や便秘などを引き起こすのは、腸内細菌の中でも善玉菌を減らしてしまうことが関係しています。

腸内フローラ

腸内細菌の理想的なバランスは善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7ですが、このバランスが抗生物質により乱れてしまうと腸に不調が現れるのです。

抗生物質が腸内細菌を減らすのはなぜ?

抗生物質には様々な種類があり、どんなタイプの細菌に対する効果があるかによって使い分けられます。
さらに、臓器に対する相性も抗生物質を使い分ける際のポイントとなり、病気の種類によって使用する抗生物質は異なります。

また、広く色々な種類の細菌に作用するタイプの抗生物質であれば、違う病気であっても同じ薬が使われる場合もあるのです。

また、抗生物質は一つの菌だけに効くのではなく、複数の細菌に対する効果がある場合があります。
例えば、原因菌が不明の場合には広範囲の細菌に効く方が治療効果が得られやすいこともあり、臨床的にも重宝されているのです。

しかし、広範囲に効くということは、悪い菌ばかりではなく人体にとって必要な腸内細菌にも影響してしまう場合があることが問題となります。
また、腸内細菌自体が病気の原因菌である場合もあり、抗生物質の種類によっては腸内細菌に対する高い効果を示すタイプも存在します。

腸内細菌を殺してしまう抗生物質はどれ?

抗生物質といっても全てが同じように腸内細菌に作用してしまうのではありません。また服用後の下痢の発生頻度にも違いがあります。

ある研究によると、セフェム系第四世代、カルバペネム系、ニューキノロン系という種類に分類される抗生物質では服用後の下痢が発生しやすいというデータがでています。
これらは広範囲の細菌に効く特徴がある抗生物質です。
また逆に、下痢が発生しにくい抗生物質としてはセフェム系第一世代、アミノグリコシド系が挙げられます。

これらは抗菌作用のある細菌のタイプが限られていることが特徴になります。抗生物質を処方された時には下痢を起こしやすい薬かどうか医師または薬剤師に相談してみると良いでしょう。

参照:薬剤別にみた抗菌薬関連下痢症の発症リスク考察より

そもそも、抗生物質のはたらきとは?

抗生物質は抗菌剤とも呼ばれることがありますが、厳密には微生物が生み出した化学物質のことです。
抗菌剤は人工的に作られた化学物質を含むものですが、作用は似ていて同様に注意が必要です。

この抗生物質の作用には主に2つあります。腸内細菌への影響を知る上で、抗生物質のはたらきについても知っておきましょう。

細菌を殺す作用

殺菌作用により細菌などの微生物を殺して体内で増えるのを防ぐ

細菌の増殖を抑える作用

細菌など微生物の増殖を妨げて体内で増えないように抑える

抗生物質の種類によってどちらの作用を持つかは異なります。どちらのタイプでも腸内の善玉菌の働きを弱めてしまう場合があるので注意が必要です。

参照:田辺三菱製薬 皮膚の炎症で「抗生物質」は使うべき?

腸内細菌への影響が少ない抗生物質はあるの?

抗生物質の中には比較的、特定の腸内細菌への影響が少ないタイプがあります。
特に次の2つについては研究により腸内細菌の1種であるColinsella属への影響が少ないとされています。

  • セフェム系
  • モノバクタム系

ただし、抗生物質を服用した際の影響については個人差があり誰でも同じという訳ではありません。
下痢や軟便などの体調変化に注意しながら服用するよう心がけましょう。

参照:腸内細菌学雑誌 Vol.14
ヒト腸内最優勢菌種であるCollinsella属とその他関連菌種の薬剤感受性

抗生物質の腸への影響を減らすことはできる?

抗生物質は腸内細菌を減らしてお腹の調子が悪くなるので飲みたくないと思うかもしれませんが、治療のためには必要な場合もあります。
細菌の感染が疑われる場合や、感染を防ぐ必要がある場合に抗生物質は大変役に立ちます。

なるべく腸への影響を減らして服用するにはどのような工夫をすれば良いかについてお話しします。

整腸剤を併用する

抗生物質による腸内細菌への影響を減らすために、一緒に服用すると良いのが整腸剤です。
整腸剤にはビフィズス菌や乳酸菌などが含まれており、腸内細菌の善玉菌を増やしてくれる作用があります。

抗生物質により減ってしまった善玉菌を増やすことで、下痢や軟便などの腸のトラブルを起こしにくくなります。整腸剤は市販薬でも購入することができるので、もし抗生物質の影響を減らしたいのであれば薬局で購入すると良いでしょう。

ただし、抗生物質の種類によって整腸剤は使い分けが必要であり、市販の整腸剤では効果が期待できない場合もあります。
自己判断で整腸剤を選ぶよりも医師に処方してもらった方が安心です。

注意を促す女性

抗生物質は病気や原因菌によって使い分けが必要

抗生物質を選ぶ際には腸内細菌への影響を考慮することももちろん大切ですが、そもそもの病気の治療に効果がなければ意味がありません。
病院で医師が処方する際には、病気や原因菌によって抗生物質を選び、その上で腸への影響を考慮しつつ処方を決定していくことになります。

特に普段からお腹が緩い方や、下痢をしがちな方、抗生物質によってお腹の調子が悪くなりやすい方は予め医師にその旨を伝えておくと良いでしょう。

抗生物質による影響を受けにくい腸を作るには?!

抗生物質による腸への影響を防ぐには、日頃から腸内環境を整えて、抗生物質の影響を受けにくい状態にしておくことが大切です。

具体的にどのように気をつければ良いのかについてお話しします。

乳酸菌を摂取して善玉菌を増やす

乳酸菌は腸まで届いて乳酸を発生して腸内を酸性に保つことで悪玉菌を抑え、蠕動運動を高めてくれる効果があります。

便秘を解消する作用もあるので、日頃から便秘がちな人は積極的に取り入れることをおすすめします。善玉菌の方が悪玉菌よりも優勢な理想的なバランスを保っていれば、抗生物質による影響も受けにくくなることでしょう。

乳酸菌は食品から取り入れていくことができます。
特に日本人の長い腸には胃酸に強い植物性乳酸菌がおすすめです。植物性乳酸菌は昔から伝わる発酵食品に多く含まれています。
例えば、しば漬け、ぬか漬け、すぐき漬け、味噌、醤油や日本酒などがあります。

発酵食品

 

発酵食品の中ではヨーグルトが腸に良い食品として人気がありますが、日本人の腸に馴染みが深いのはどちらかというと先に挙げたような発酵食品です。

現代人は食生活の変化によって日本古来の伝統食材を食べる機会が減っていますが、もっと積極的に取り入れていく方が体質的にも適していると言えます。
もしくは、サプリメントタイプを活用するという方法もあります。自分に合った摂取方法を選んで続けていくことが効果を上げるポイントです。

オリゴ糖を摂取して腸内環境を整える

オリゴ糖は糖類の中でも最小単位である単糖類が2から20個くっついたものです。オリゴ糖は人間の消化酵素では分解されることはなく、そのまま腸まで届きます。
腸内でオリゴ糖は腸内細菌の餌となって善玉菌が増えるのを助けてくれます。つまり腸内環境が改善するのです。

オリゴ糖は、玉ねぎ、ねぎ、キャベツ、ごぼう、納豆などに多く含まれています。
また、果物ではバナナやりんごなどにも含まれます。日頃からこれらの食品を食べてオリゴ糖を取り入れることで腸内環境を改善することができ、抗生物質による影響を受けにくくしてくれます。

また、オリゴ糖は下剤とは違い穏やかな効果を与えてくれるので、便秘に悩んでいる場合にも取り入れると良いでしょう。手軽なシロップタイプのオリゴ糖も簡単に取り入れられるのでおすすめです。

参照:「おなかの張り」を取れば腸は年をとらない。(松生恒夫 著)

腸内環境を改善して免疫力を高める

腸は免疫力と深い関係があります。免疫力というのは外から入ってくるウイルスや細菌などの異物に対して体を守るための防御反応のことです。

腸内環境を整えることは免疫力を維持することに繋がります。逆に腸内環境が悪化してしまうと免疫力が低下して、例えば風邪やインフルエンザなどの感染症に罹りやすくなると考えられます。
その結果、抗生物質を服用することになれば、更に腸内環境を悪化させることにもなりかねません。

腸内環境を改善して免疫力を高めておけば、病気にも罹りにくくなり抗生物質を服用する機会も減ることになり結果的に腸に優しいということにもなります。

抗生物質による腸へのダメージを防ぐには、日頃から腸内環境を整えて免疫力を高めておくことが根本的な対処法になると言えるでしょう。

参照:すべては腸内細菌で決まる(藤田紘一郎 著)