注目の「5つの発酵菌」で腸がイキイキ!
発酵食品に使われる発酵菌。発酵菌は腸内細菌の有益菌を増やして、私たちの腸をイキイキさせてくれます。そんな発酵菌を5つご紹介しましょう。
目次
腸をイキイキさせる5つの発酵菌とは?!
これからご紹介する5つの発酵菌は、
- 麹(こうじ)
- 納豆菌(なっとうきん)
- 酢酸菌(さくさんきん)
- 酵母菌(こうぼきん)
- 乳酸菌(にゅうさんきん)
発酵菌その1「麹(こうじ)」
味噌や醤油に使われることで有名な麹。甘酒は「飲む点滴」と呼ばれたり、塩麹は万能調味料として、一時期ブームにもなりましたね。
麹は、米・麦・大豆などの穀物に麹菌が生育したもので、日本の発酵食品のほとんどに使われています。
参照:まるみ麹本店 麹の知識
- 味噌
- 醤油
- 食酢
- 鰹節
- 漬物
- 清酒
- 焼酎
- 泡盛
- アミラーゼ・・・でんぷん質を糖に分解
- プロテアーゼ・・タンパク質をアミノ酸に分解
- リパーゼ・・・・脂肪を分解
麹の腸への効果は?
私たちの腸内にいる有益菌は、ほとんどが乳酸菌です。麹は、この乳酸菌の数を増やすんです。
乳酸菌だけ(青色)よりも乳酸菌が麹菌と一緒にいる(赤色)方が、菌の数がグンと増えていますね。これには、麹に含まれるオリゴ糖の影響もあるでしょう。実は、オリゴ糖は有益菌のエサになるんです。
腸内の有益菌である乳酸菌が増えると、乳酸菌が出す乳酸が腸内を弱酸性にしてくれます。
すると、腸内の有害菌が排除されますから、腸内環境が良好になるんです。
また、麹にはビタミンB群を増やす力もあるので、美容効果も期待できますよ。
発酵菌その2「納豆菌(なっとうきん)」
納豆で有名な納豆菌。普通に自然界に存在しています。
稲の藁(わら)に多く生息し、日本産の稲の藁1本に、ほぼ1000万個の納豆菌が芽胞の状態で付着している。
参照:ウィキペディア 納豆菌
※芽胞とは...
乾燥、高・低温、薬剤など、その生育環境が変化した場合に、そのような過酷な条件に耐えて生存するため、細菌の細胞内につくられる胞子に似た球状の構造体を芽胞という。
かつて話題になったナットウキナーゼは、血液サラサラ効果が注目されましたね。⇒血液サラサラ効果に関する研究はこちら
納豆には、他にもさまざまな効果が期待できるんです。
- 体の働きに欠かせない多くの酵素を作り出す
- 血中コレステロールを低下させる
- 善玉コレステロールを増やす
- 血圧の上昇を抑える
- 細胞の再生や成長を促進させる
- 粘膜を保護する
- カルシウムが骨になるのを助ける
- 消化を助けて腸内をきれいにする
- 女性ホルモンの欠乏を補う
納豆菌の腸への効果は?
ここで、納豆の類似菌である枯草菌のC-3102株を用いて行われた、カルピス株式会社と社会保険相模野病院の共同研究をご紹介しましょう。
25~57歳の健康な人25名(男性22名、女性3名)に枯草菌C-3102株を含んだ錠剤を、1週間飲んでもらいました。
- グループA:毎食後1錠(1日3錠)・・・12名
- グループB:毎食後3錠(1日9錠)・・・13名
その結果、グループBで、腸内の有益菌であるビフィズス菌が枯草菌C-3102株の摂取後に増え(左のグラフ)、有害菌である大腸菌が摂取後に減った(右のグラフ)のです。
また、グループBでは、便中の腐敗産物(有害菌が産生する有害物質)が減少していました。
さらに、どちらのグループも、便中のアンモニアが減少していて、においや排便回数の改善が見られたのです。便中のアンモニア減少は、腸内の有害菌が減ったことを意味しています。
納豆菌は腸内細菌だけでなく、外からの病原菌に対しても効果があって、サルモネラ菌や病原性大腸菌の増殖を抑える働きもあるんです。納豆は食中毒の予防にもなるんですね。⇒病原菌の増殖抑制に関する研究はこちら
発酵菌その3「酢酸菌(さくさんきん)」
食酢の主成分である酢酸。酸味と鼻にツンと来る刺激臭がある無色透明の液体「酢酸」を産生するのが酢酸菌です。
天然には、糖や植物性の炭水化物が酵母により醗酵してエタノールが生成しているような場所に存在する。
花の蜜や傷ついた果実などからも単離される。また、低温殺菌・濾過滅菌していない、作りたてのリンゴのシードルやビールにもよくみられる。
- ワインヴィネガー
- モルト酢
- 米酢
- りんご酢
- 柿栖
- ナタデココ
- カスピ海ヨーグルト
酢酸菌の腸への効果は?
酢酸菌が出す酢酸によって、整腸作用や排便を促進する作用が期待できます。でも、酢酸をお酢として飲んでも消化・吸収されて腸まで届きません。
ですから、腸で酢酸を作り出してくれるビフィズス菌を増やすと、腸への効果が期待できますよ。
実際、塩酸や乳酸に比べて、ビフィズス菌の作る酢酸が最も大腸菌の増殖を抑制する効果が高いんです。腸内の有害菌が減れば、有益菌が増えて腸内環境が良好になりますよね。
また、森永乳業株式会社と理化学研究所との共同研究により、
「ビフィズス菌BB536」は自らが作り出す酢酸や乳酸などの有機酸や葉酸などのビタミンB群といった有用物質に加え、ヒト腸内細菌叢と相互作用することで、ビフィズス菌以外が作る酪酸やビオチンといった有用物質の量を増加させているという研究結果を得ました。
つまり、ビフィズス菌が作る酢酸は、腸内の有害菌を減らすだけでなく、腸内の有益菌が作る有益な物質を増やす働きもあるんですね。
発酵菌その4「酵母菌(こうぼきん)」
酵母は、植物の樹液や花の蜜(みつ)、果物、大気中、土の中など至る所に存在しています。
酵母は糖分に作用してアルコールと炭酸ガスに分解する働きをもつ発酵菌です。
- パン
- 味噌
- 醤油
- 鰹節
- 塩辛
- 漬物
- キムチ
- ピクルス
- ヨーグルト
- チーズ
- ビール
- 日本酒
- ワイン
- ウイスキー
酵母菌の腸への効果は?
それぞれの食品は異なる酵母による発酵を利用していますが、すべてに共通して、整腸作用が期待できます。
ここで、株式会社日健協サービスなど5つの企業・大学・病院で行われた共同研究をご紹介しましょう。
その結果、排便回数、排便日数、排便量は増加し、便の形、色、におい、スッキリ感は改善しました。
さらに、科学雑誌ネイチャーに「酵母を好む腸内細菌」として、掲載された記事をご紹介しますね。
ヒト腸内微生物相の優占種の1つであるBacteroides thetaiotaomicronは、宿主の糖タンパク質と酵母由来の多糖の両方に由来する複雑なα-マンノース含有糖質を栄養源として利用できることが明らかになった。
つまり、腸内の有益菌の一つが、酵母菌の発酵で作られた糖質を栄養源としているというのです。酵母菌による発酵食品の摂取で、腸内の有益菌が増えることが期待できますね。
発酵菌その5「乳酸菌(にゅうさんきん)」
乳酸菌とは乳酸を産生する菌の総称です。
- ヨーグルト
- チーズ
- バター
- 乳酸菌飲料
- 漬物
- キムチ
- ピクルス
- 塩麹
- 味噌
- 醤油
- 日本酒
- ワイン
- マッコリ
- 甘酒
乳酸菌の腸への効果は?
乳酸菌は腸内の有益菌でもあり、最も整腸作用が期待できるでしょう。また、排便を促進する作用もありますので、便秘の改善も期待できます。
乳酸菌のうち、死んでいる状態でも効果を示すフェリカス菌を用いて、株式会社伊藤園と株式会社オルトメディコが行った共同研究をご紹介しましょう。
20~39歳の便秘気味な24名に、次の飲料を1日1本(280mL)、2週間飲んでもらいました。
- プラセボ群:フェカリス菌やオリゴ糖を含まない飲料
- 低用量群:オリゴ糖を含むフェカリス菌(1000億個)入り乳性飲料
- 高用量群:オリゴ糖を含むフェカリス菌(1兆個)入り乳性飲料
その結果、フェリカス菌が含まれた飲料を飲んだ人の腸では、有益菌であるビフィズス菌がかなり増えました。
また、フェリカス菌を含む飲料を飲んだ人は、便の硬さが柔らかくなって便通が改善されたのです。
乳酸菌は、他にも免疫力を上げたり、アレルギー症状を緩和したり、さまざまな効果が期待できるんですよ。
発酵菌には、腸をイキイキさせる他にも様々な効果が期待できます。毎日の食事に、どんどん発酵食品を取り入れるようにしたいですね。