過敏性腸症候群は市販薬で治せる?症状別市販薬の選び方
過敏性腸症候群は血液検査や大腸検査ではっきりとした原因が見つからないにも関わらず、腹痛、便秘、下痢やガスなどの腸の不快な症状に繰り返し悩まされる病気です。
過敏性腸症候群というと病院でないと対処できない病気とも思われがちですが、病院に行く時間が取れない、なるべく自分で対処したい場合には市販薬という手段もあります。そこで、市販薬でも効果は期待できるのか、市販薬の選び方などについて解説していきます。
目次
過敏性腸症候群は市販薬で対処できるの?
腹痛や便秘、下痢の症状を繰り返す病気に過敏性腸症候群があります。過敏性腸症候群は基本的には病院で診断を受けて、適切な治療を受けることが望ましい病気です。
しかし、すぐに病院に行くことができない場合など、自分で対処したいという時には市販薬で対処することも可能です。
市販薬でも対処できる場合とできない場合がある
過敏性腸症候群は腹痛、下痢、便秘をそれぞれ繰り返す人もいれば、便秘と下痢を交互に繰り返すなど症状が複雑になる場合があります。
例えば、急な下痢をなんとかしたい場合には、市販薬でも対処できることがあります。
しかし、下痢と便秘を交互に繰り返しているような状態を根本的に改善したいという場合には、病院での治療が必要になってきます。
症状によっては市販薬では対処が難しく、自己判断で治療しない方が良いこともあり、薬の使い分けには注意が必要です。
過敏性腸症候群に効く市販薬
過敏性腸症候群による症状を市販薬で対処する場合には、根本的な治療ではなく症状そのものを抑えるだけの対症療法となります。
そこで症状の違いによって市販薬を使い分けることが必要です。それぞれの症状別に、どんな市販薬を使えば良いのか解説します。
下痢型
通学や通勤などトイレに行けない状況で突然の下痢や腹痛の症状に悩まされる場合には、下痢型の過敏性腸症候群である可能性があります。
急に下痢をしてしまうと、仕事や遊びなどの予定にも支障を来してしまうので、早く対処したいところです。
市販薬の中でも、下痢止め薬はいくつかありますが、「ストッパ(ライオン株式会社)」は突然の下痢に対して効果のあるお薬で過敏性腸症候群でも使うことができます。
有効成分のロートエキスが、腸の異常な収縮を抑えて下痢を止めてくれます。水なしでも飲めるので、外出先で水を用意できない状況であってもすぐに服用できるので便利です。
ちなみに下痢止め薬であっても、「正露丸」のように、殺菌成分により下痢の原因菌を殺して症状を抑える作用の場合には過敏性腸症候群の下痢や腹痛に対する効果は期待できません。
下痢止め薬といっても、成分による違いがあるので、店頭で薬剤師などによく相談してから購入することをおすすめします。
便秘型
慢性的な便秘に悩まされる便秘型の場合、市販薬の便秘薬を飲んで対処しようと考えがちですが、便秘薬を使用することはおすすめできません。
便秘型の過敏性腸症候群の場合には、腸の異常な蠕動運動(ぜんどううんどう)が関係していると考えられています。
また、便秘に伴って腹痛の症状に悩まされることもあります。便秘薬を使ったら治るのでは?と思ってしまうところですが、便秘薬を使うのは逆効果になります。
便秘薬に含まれる成分の多くは、大腸を刺激して蠕動運動を起こすので、異常な蠕動運動を伴う便秘型の過敏性腸症候群の症状を悪化させる恐れがあるからです。
便秘型の場合には、安易に市販の便秘薬で対処しないようにしましょう。
混合型
便秘と下痢の症状を交互に繰り返す下痢・便秘型の過敏性腸症候群の場合には、それぞれの症状によって対処を変える必要があります。
下痢や腹痛の症状が起きた時には、下痢型と同じく下痢止め薬のストッパなどを使用して一時的に対処することができます。
しかし、便秘の症状が起きた場合には、便秘型の場合と同じく大腸を刺激するタイプの便秘薬を使用することはおすすめできません。
では、便秘の症状が出る場合には市販薬では対処できないのかというと、方法が無いわけではありません。
市販薬の中で、唯一全てのタイプにおいて使うことが可能なのが整腸剤です。整腸剤は腸内細菌のバランスを整えて、下痢や便秘などの腸の不調を整えてくれる作用があります。
下痢や便秘が続いているということは、腸内細菌のバランスが悪く、悪玉菌が優勢になっています。
特に、過敏性腸症候群はストレスとの関係が深いことがわかっていますが、ストレスによって増加する悪玉菌も関係している場合があります。
整腸剤は即効性はありませんが、続けて服用することによって腸内細菌のバランスが整えば、過敏性腸症候群の症状が徐々に落ち着いてくることも期待できます。
参照:腸内細菌の驚愕パワーとしくみ(瓣野義己 著)
すでに診断を受けている再発型
過敏性腸症候群による腹痛を伴う、便秘や下痢に対する効果が認められている市販薬として「セレキノンs」(田辺三菱製薬)があります。
「セレキノンs」は病院でも処方される薬と同じ成分であり、他の市販薬とは異なり過敏性腸症候群に対する専用薬です。
消化管運動を調整する作用があるトリメブチンマレイン酸塩が配合されています。
ただし、市販薬の中でも要指導医薬品に指定されており、自由に薬局で手にとって買える薬ではありません。
まず、病院で今までに医師から過敏性腸症候群の診断が下りていることが購入する条件です。
さらに、購入する場合には店頭でチェックシートを用いて薬剤師から説明を受ける必要があります。例えばいつもは病院に行って薬をもらっているが、薬が切れてしまい困った状況の場合などに、セレキノンsの購入を検討してみると良いでしょう。
市販薬を使う上での問題点は?
市販薬は困った時に近くの薬局やドラッグストアで購入できるので便利な存在ですが、使用する場合には注意が必要です。
「市販薬=安全な薬」というイメージがあるかもしれませんが、使い方を間違えれば症状を悪化させる場合もあります。次の問題点を理解した上で、市販薬を安全に使うようにしましょう。
市販薬では効かない場合もある
過敏性腸症候群はストレスが大きく関係している場合があります。また、腸が刺激に敏感になっている知覚過敏が症状を引き起こす原因とも考えられていますが、完全には明らかにはなっていません。
市販薬はあくまでも対症療法であり、根本的な治療は出来ないので再び症状を繰り返すことになります。
下痢型、便秘型、混合型のいずれであっても、市販薬では選択できる薬に限界があり、症状の程度や状況によっては対処しきれない可能性もあります。
自己判断で便秘薬を使うのは危険
腹痛を伴う便秘や下痢を繰り返す症状は過敏性腸症候群に限ったものではありません。
大腸ガン、クローン病、潰瘍性大腸炎などの病気でも同様の症状が見られる場合があります。
自己判断で市販薬で一時的に効果が得られたとしても、違う原因が隠れていた場合には発見を遅らせることになり、病気が進行してしまうことも考えられます。まずは、市販薬を使う前に医師に相談することが大切です。
市販薬で対処できない場合にはどうしたら?
過敏性腸症候群は市販薬で対処できる場合と対処出来ない場合があります。対処出来ない場合には、どのように対応するのが望ましいのでしょうか。
過敏性腸症候群の治療は病院が基本
過敏性腸症候群の治療は市販薬を自分で選んで使うよりも、病院での治療をおすすめします。
市販薬の場合には選択肢が限られていること、効果が期待出来ない場合もあるという理由から、どうしても病院に行けない場合に限って使うものと考えた方が良いでしょう。
また、病院では過敏性腸症候群かどうかの診断をするために、大腸検査や血液検査などを行って他の病気との鑑別を行います。
重大な病気が隠れていないことを確認するためにも、医師の診断を受けた方が安心です。
処方薬には過敏性腸症候群の専門薬がある
病院での治療がおすすめなのは処方薬には過敏性腸症候群に対する専門薬があることも理由です。
例えば、「イリボー」という処方薬は神経の働きを整えて過敏性腸症候群の下痢や腹痛の症状を改善する薬です。同じ成分の薬は市販薬では購入することが出来ません。
市販薬は他の病気による下痢や腹痛、便秘などにも使われる薬を過敏性腸症候群の場合にも適応させて使っているだけですが、「イリボー」は下痢型の過敏性腸症候群のために開発された薬であり優れた効果が期待できます。
ただし、どの薬が適応になるかは症状や状態によって個人それぞれに違います。医師の診断を受けた上で、よく相談して処方を受けるようにしましょう。
薬での治療と合わせて行える対処法
過敏性腸症候群の場合には生活習慣も大きく症状に影響を及ぼしてきます。
薬を飲んで良くなったとしても、原因となっている生活習慣が変わらなければ同じ症状を繰り返してしまうことでしょう。
自分の生活を見つめ直し、腸に良い習慣を身につけることが症状の再発を防ぐためにも大切です。薬での治療とともに、次のような対処法を取り入れていくと良いでしょう。
腸内環境を整える食生活
下痢や便秘を繰り返す場合には腸内環境が悪化していることも考えられます。腸内環境を整えることにより、症状の重症化や再発を防ぐことにも繋がります。
腸内環境を整えるには次のような食べ物を摂取することがおすすめです。
- ヨーグルト、漬物、味噌、キムチなどの発酵食品
- バナナやキウイなどの水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく含む食品
- 排便を促す作用のあるオリーブオイル
参照:「おなかの張り」をとれば腸は年をとらない!(松生恒夫 著)
ストレスを溜めない生活を送ることが大事
腸は「第二の脳」とも言われるほど、感情やストレスなどとの関係が深く、「脳腸相関」といわています。
ストレスが脳神経と腸神経叢(しんけいそう)の両方に働いて、大腸や小腸の運動を鈍らせたり、過剰に働かせたり、消化管が刺激に弱くなる知覚過敏を起こすことがわかっています。
ストレスは過敏性腸症候群の大きな原因の一つでもあり、溜めないようにすることが予防に繋がります。
しかし、人間ならば誰にでも多少なりともストレスは存在し、ゼロにすることは難しいでしょう。まずは、ストレスとなる原因からなるべく距離を取ることです。
もし、ストレス源を避けられないならば、考え方を変えたり、捉え方を変えることも大切です。
自分にとってプレッシャーやストレスとなるような生活を変えて、ゆっくりと自分にあったペースで暮らせるように心がけることが症状の改善にも繋がります。
参照:腸内細菌の驚愕のパワーとしくみ(瓣野義己 著)