コーヒーが腸内細菌を増やす − 注目が集まるクロロゲン酸


コーヒーが好きな人って、1日に何杯も飲んだりしますよね。

反対に、苦くてキライと言う人や、健康のためにあまり飲まないと言う人もいます。コーヒーは、お腹に悪いというイメージがあると言う人も...

でも、このイメージを変えてくれるニュースがあるんです!

コーヒーに含まれるクロロゲン酸が、腸内細菌を繁殖してくれるということが、わかってきました。

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クロロゲン酸で腸内細菌が繁殖する?!

まず、クロロゲン酸についてご説明しますね。

クロロゲン酸ってなに?

クロロゲン酸と言うのは、ポリフェノールの一種です。

コーヒーには、クロロゲン酸などのポリフェノールが豊富に含まれています。その量はカフェインよりも多く、コーヒーの褐色や苦味、香りのもととなっています。

コーヒーの飲用が、がんや糖尿病、動脈硬化などの予防に有効であるという研究成果が相次いで報告され、その効果にクロロゲン酸などのポリフェノールが持つ抗酸化作用が寄与しているのではないかと、注目を集めています。

参照:全日本コーヒー協会 クロロゲン酸

クロロゲン酸で繁殖する腸内細菌は?

クロロゲン酸で繁殖するのは次の2つ。

  • 腸内の有益菌であるビフィズス菌
  • 日和見(ひよりみ)菌であるクロストリジウム・コッコイデス
日和見菌と言うのは、その時々で有益な働きをしたり、有害な働きをする菌で、腸内に有益菌が多いと有益菌のように働きます。

英レディング大学のシャルロット・ミルズ氏らの研究グループが、行った研究をご紹介しましょう。

研究グループは、大腸の端の糞便を、コーヒーとクロロゲン酸と一緒に培養。腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の成長にどのような影響を及ぼすのかを検証した。

結果、クロロゲン酸、ジヒドロカフェ酸、ジヒドロフェルラ酸の3つのコーヒーの成分が4時間で急速に代謝されると分かった。クロロゲン酸を最も含むコーヒーで、10時間後にビフィズス菌の増加量が多いと分かった。コーヒーに含まれていたクロロゲン酸と同じ量に相当するクロロゲン酸だけを使っても、ビフィズス菌の増加量が増えた。

クロロゲン酸だけでも、クロストリジウム・コッコイデスとユーバクテリウム・レクタレという腸内細菌の成長が促されていた。

参照:Medエッジ コーヒーで腸が健康になる?

では、これらの菌が繁殖するとどうなるのでしょう?

ビフィズス菌が繁殖するとどうなる?

ビフィズス菌と聞くとヨーグルトを思い浮かべる人も多いかもしれませんね。でも、ビフィズス菌は私たちの腸内にも生息しているんです。

ビフィズス菌を始めとする有益な腸内細菌の働きは、大別すると5つ。

腸内細菌の有益な働き

  1. 良好な腸内環境の保持
  2. 免疫機能の向上
  3. 短鎖脂肪酸の産生
  4. 鉄分・難消化性成分の吸収補助
  5. ビタミン類合成
1つずつ見ていきましょう。

1.良好な腸内環境の保持

良好な腸内環境とは有害な菌が少なく、有益な菌が多い状態です。

有益菌の働き

  • 酸を発生させて有害な菌を腸から追い出す
  • 腸の排便運動である「蠕動(ぜんどう)運動」を活性化する
有益菌が多い良好な腸内環境では、腸の運動が活溌で排便がスムーズ。なので、有害物質や老廃物も溜まりません。

2.免疫機能の向上

・細菌の防衛本能
    腸内細菌が住処(すみか)にするのは腸の粘膜。腸内細菌は、体外から有害な菌やウイルスが侵入して来た時、自分の住処を守ろうとします。細菌の防衛本能が結果的に私たちを守ってくれるのです。
・免疫細胞の活性化
    ウイルスや病原菌などを攻撃して私たちの体を守ってくれるのが免疫細胞。有益菌がその免疫細胞を活性化させるのです。

免疫細胞の活性化で病気になりにくくなるでしょう。

3.短鎖脂肪酸の産生

ビフィズス菌は、糖を分解して乳酸と酪酸を作り出します。酪酸は腸にとって重要なエネルギー源で、抗炎症作用が見られます。

酪酸のような有機酸を短鎖脂肪酸と呼び、他にも酢酸、プロピオン酸などがあります。

短鎖脂肪酸の働き

  • がん予防(大腸、肝臓)
  • 肥満予防
  • 抗ストレス
  • 糖尿予防
  • 免疫調節
短鎖脂肪酸は体のあらゆる部分に効果があるんですね。

4.鉄分・難消化性成分の吸収補助

腸が鉄分を吸収できる形に変えます。また難消化性(消化されにくい)成分である食物繊維を分解します。
有益菌なしでは、これらの成分は吸収できないのです。

5.ビタミン類合成

ビタミンKやビタミンB群を始め、9種類ものビタミンを合成します。

感染症などにかかった時、抗生物質を処方されたことがあるでしょう。抗生物質はウイルスや病原菌を殺すために服用しますが、長期間服用し続けると腸内細菌も死滅してしまい、ビタミンK欠乏症になる可能性があると言われているんです。腸内細菌の重要な働きの一つなんですね。

クロストリジウム・コッコイデスが増えるとどうなる?

クロストリジウム・コッコイデスは分類上は日和見(ひよりみ)菌。

特に免疫抑制作用について、有益菌よりも高い効果が確認されています。アレルギーや炎症性腸疾患の救世主として注目されているのです。

はじめにご説明した通り、日和見菌は有益菌が多い良好な腸内環境で有益な働きをします。ですから、まずは有益菌を増やす事が大切でしょう。

コーヒーの効果あれこれ

コーヒーは、他にも、脂肪燃焼に役立ちますし、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患の死亡率を下げるとも言われているんです。

国立がん研究センターの研究報告をご紹介しましょう。

コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、全く飲まない人に比べ24%低いことが分かりました。さらに、飲む量が増えるほど危険度が下がる傾向が、統計学的有意に認められました。

死因別に調べたところ、がん死亡の危険度には有意な関連がみられませんでしたが、心疾患死亡、脳血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡については、コーヒー摂取による危険度の有意な低下がみられました(図2)。

※部位別に行われた先行研究では、コーヒー摂取と肝がん、膵がん、女性の大腸がんと子宮体がんのリスク低下との関連が示唆されています。
コーヒー摂取と死因別死亡リスク

参照:国立がん研究センター コーヒー摂取と死亡との関連について

コーヒー摂取で死亡率が下がるのは、クロロゲン酸の血糖値改善、血圧調整、抗炎症作用と、カフェインの血管内皮の機能改善、気管支拡張作用などが、危険因子を調整するからだろうと考えられています。

コーヒーを飲み過ぎると...

ここまで健康に良いとご説明してきましたが、やっぱり飲み過ぎはよくありません。

飲み過ぎで胃が荒れたり、胃痛がしたという経験がある人は少なくないでしょう。また、カフェインによる覚醒作用で眠れない夜を過ごした経験はないでしょうか?さらにクロロゲン酸が舌に付着するとにおいの元になるんです。

飲み過ぎは良くありませんが、これだけ効果があるなら、コーヒーがもっと好きになりそうですね。